Experiences in UK
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2003年12月15日(月) 第18週 2003.12.8-15 ジョニー・ウィルキンソン!、英国の勲章制度

(ジョニー・ウィルキンソン!)
この週末、イギリスの年末特番で「2003 BBC Sports Personality of the Year」という番組がありました。BBCの年末恒例番組らしく、第50回とのことでした。今年のイギリス・スポーツ界を振り返って、活躍したスポーツ選手・団体に賞を与えるというものです。
当然、番組のクライマックスは、W杯を制したラグビー・イングランド代表であり、2時間番組のトリとしてジョニー・ウィルキンソンに大賞が授与されました(なお、次点はラグビー・イングランド代表チームのキャプテンであるマーチン・ジョンソン)。現在のイギリスで最大のヒーローは、まちがいなくウィルキンソンです(スポーツ界に限らず!)。先日は、24才の若さで大英帝国勲章(Member of the Order of British Empire, MBE)を女王陛下から授与されていました。

ウィルキンソンは、サーカー界の大スターであるベッカムとは好対照のヒーローです。頭の先から足の先まで派手好みで染まりきっているベッカムと違って、ウィルキンソンは自分だけが脚光を浴びることを極端に嫌っている典型的なreluctant heroです。ベビーフェイスと相俟ってそのような控えめな性格が、人気の一因にもなっているのでしょう(私はラグビー・プレーヤーとしての実力も、名声に恥じない選手だと思っていますが)。
こちらでは、一時期ウィルキンソンとベッカムが競演しているテレビ・コマーシャルが流れていました。ウィルキンソンがサッカーのゴール・キックを蹴り、最初は外すのですが2度目で鮮やかに蹴りこみます。次に、ベッカムがウィルキンソンのアドバイスを受けた後に、ラグビーのプレース・キックをするのですが、これが見事にポスト中央に決まり、その後一言「It's easy.」と決めゼリフを吐いて終わります。ラグビー・ファンからすると小憎たらしいCMでしたが、両者のキャラクターを反映させた面白いCMでした。

(英国のF1ドライバー)
さて、上記BBCの番組では、途中で過去の名プレーヤーが登場するコーナーが挟まれていました。その中でF1の名ドライバーということで何人かがスタジオ出演し、私の年代にとって懐かしいナイジェル・マンセルやデーモン・ヒルなどが登場しました。
マンセルは昔の感じから少し太ったという程度でさほど変わっていませんでしたが、様変わりしていたのがヒルです。髪を伸ばして髭を蓄えた容貌は、昔のヒッピーのようでした。
F1ドライバーについて、以前に「英国にはろくなドライバーがいない」と書いた記憶がありますが、よく考えると現役でもベテランのデビッド・クルサードがいましたし、若手ではジェイソン・バトンなどという有望株もいました。また、チームについても、ジョーダン、ジャガー、BARなど錚々たるチームがありました(先日、近所でBAR・ホンダチームのトレーラーを見かけました)。かつてのような、F1といえば英国という感じではないものの、やはり今でも英国はF1の中心国であることに変わりないのでしょう。

(英国の勲章制度)
さて、ウィルキンソンの叙勲の話に戻ります。今回、興味があったので英国の勲章制度について少しだけ調べてみました。大英帝国勲章(Order of the British Empire)とは、1917年に創設された勲章制度で、当初は戦功のあった人に贈られていましたが、今では学問・文化を含めた幅広い分野から選ばれるそうです。93年のメージャー政権期以降、一定の地位の保有者に自動的に授与する慣行をやめて、功績に基づいてより多くの適格な人々に叙勲制度を開放したそうです(以上、主に在日英国大使館HPより)。
叙勲の等級には1位から5位まであり、1位はGrand Cross(Grand Cross of the order of British Empire, GBE)、2位はKnight(女性の場合はDame, KBE/DBE)、3位がCommander(CBE)、4位がOfficer(OBE)、5位がMember(MBE)となっています(以上、英国Cabinet OfficeのHPより)。
もっとも一般的でポピュラーな勲章が、OBEとMBEです。今年、ベッカムがOBEを授与されており、ウィルキンソンはMBEを授与されました。日本人でも、かつて当地でシェークスピア劇を演じて好評を博した真田広之がMBEを授与されたりしています。もっと古いところでは、1965年にビートルズにMBEを授与されたことがちょっとした事件になりました。

(サー・マイケル・ジャガーの誕生)
今年ウィルキンソンとともに、60才にしてKnightの爵位(「サー」の称号)を授与されて話題になった人物にミック・ジャガーがいます。上記のように爵位の授与というのはかなり格上なのですが、ミックは当初予定されていたウィルキンソン叙勲と同日の爵位授与を嫌ってわざわざ日をずらせたというこぼれ話があります(ミックは「ウィルキンソンに悪いから」と言っていますが、本音は明らかに自分の話題が食われるのを嫌ったのでしょう)。ミックの思惑通り、当日のニュースでは「サー・マイケル・ジャガー」の誕生をどのメディアも大きく取り上げていました。
本件についてキース・リチャードは痛罵しているとのことですが、多くのストーンズ・ファンにとっても、往年の反体制ヒーローがうやうやしく「サー」の称号を下賜されるという事態に複雑な思いのようです。
私は、時代遅れの(時代背景まで背負い込んだ過剰な思い入れのない)ストーンズ・ファンの一人なので、今回の叙勲はもう少し冷静に眺めることができます。むしろさらりと「サー」になってしまう方が、ミック・ジャガーらしいという感想です。ミックは、叙勲に際して「かつて我々が知っていたような『体制』(Establishment)なんて今は存在しないと思うよ」と軽くいなしているそうです。私の感覚では、この発言の方が彼らしい印象です。
ただ、ニュース映像で、バッキンガム宮殿に同席した90何歳のミックのお父さんまで見せられると、ちょっとイメージが揺らいでしまいますが。


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