それはむかし制服の胸ポケットに入れたままどこかに仕舞い込んだものあるいは去年手帳から破って捨てたページの裏側に書かれていた言葉あるいは一昨日わたしのあごの下をかすめるように飛んだ 蝶風か翅かが耳を撫でてぎくりと首を竦めてももうあごの下より背中より見えぬ届かぬ曖昧に蝶はとけて 消えているあるいはそれらはきのう 君に返した本のあいだに挟まっていた 栞