珈琲のかおりがする向こうを秋が歩いているしんとして目を閉じて聞いているぬるい空気の中でも後悔のように冷たく濡れるかおりの向こうに透けるものがそろりと足を撫でていくにがいあまいひとり雨居心地悪く身じろぎをして手の中の珈琲が冷えていくああうんそう相槌ばかりの会話のようにかおりは無口になっていく向こうを秋が歩いていた窓の向こうに透けていた夕暮れ静か