文
- 恋文
2003年10月13日(月)
私のこの 不恰好な胸郭のうちには ひっそりと 誰に知られぬように隠し持つ 中空の球体が収まっています
薄藍の台紙を用意して 部屋の隅に居場所を落ち着けたなら こっそりと その球の中に眠るものを 撫でて揺らして起こしてあげます
光さえも滑らせ流すつややかな表面に 見詰めていればひたひたと浮かぶ黒い歪を 拾い上げては台紙に乗せて 並べ 入換え しまいに糊付け 薄藍の上を隙間無く埋め尽くす言葉の この 墨色に潜む暗いきらめきを 見たか
それらすべてあなたに渡すためのもの そうしてこの手紙は書かれたものなのです 目を見張るといい あなたはこのインクの重さすら知らない
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