迷宮ロジック
DiaryINDEX|past|will
最初から読む
ムジナ
2002年01月30日(水) |
ムジナ 第8章 誤謬 |
第八章──誤謬
「とりあえず戻ろう、風邪ををひくぞ」
「お姉ちゃん、大丈夫だった?」
振り返ると、すぐそばに、シュンとルリが立っていた。
「だいぶエキサイトしてたな。そんなに女王は嫌いか」 「嫌いなんてもんじゃない。大嫌い。吐き気がするほど嫌い」
私は思い出すだけで腹が立ってきた。
「あの人、一体何様よ。あのきどった喋り方も嫌い。 一方的に喋って一方的に消えて。 この私の拳のやりどころはどこにいけばいいわけ。 こんなに腹が立ったのってほんとに久しぶりよ。もう最悪。」
「わははは。それだけ元気があれば大丈夫かな」 「笑い事じゃ……」
もっといおうとした口元にそっと人差し指が添えられる。 黙ってのサイン。
「ここは、多分盗聴されてる」 「盗聴って、え。」
「部屋のものはほとんど外した。ここはまあ水音があるから、小声なら大丈夫だと思う。聞いてくれ、あのゲームに参加する以外ここを出る方法はないんだ。入り口はこの噴水塔の下部にあるドアしかない。このドアが開くのはゲームが開始したときと終了したときのみ。だからお願いだ。」
「君にもぜひゲームに参加して欲しい。何度か挑戦した経験から言うと、たぶん俺とルリだけじゃ謎は解けない」
「お願い。お姉ちゃん、一緒に行こうよ」 いつのまにかルリが私の腕にしがみつき、すがるような目で見つめてくる。 シュンもいつになく真剣な目をしている。
「私は……」 数秒間迷った。 ここでゲームに参加するとあの女の口車に乗ったようでとても癪に障る。 だけど、このままここに留まっていても、現状は変わらないことも確かだ。
「分かった。私も参加することにする」 その途端、ルリが抱きついてきた。 「お姉ちゃんありがとう。嬉しい」 「そうか。そうか。それは良かった」 シュンも心なしか嬉しそうだ。 だからって人の頭をぐしゃぐしゃにするのはやめて欲しい。
「でも、その前に……」 私は思わず派手にくしゃみをした。
「部屋に戻って良いかな。本気で風邪をひきそうなんだけど」
|