-殻-
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いつの間にかありふれた日々は、
日常という幻想に埋没してしまう。 何が起こっているのかすら分からず、気にもできず。 凪と思っているものは、嵐の前の静けさに過ぎないのかも知れないのに。 偽りの甘さは、僕を狂わせる。 安寧とか平穏とか、ありきたりな言葉で語られて消える。 不安と疑念はそこにあるはずなのに、姿が霞む。 求められているものを探れば、破局しか生まないだろう。 望むものを口にすれば、絶望しか得られないだろう。 それを知っているなら、演じることだけが救いになる。 定められた生活を繰り返そう。 諦めという名の期待を裏切らず、台本に従おう。 今日も僕は君を傷付けました。 君が望む通り、 君が思う通りに。 何も起こらないという暴力の中、 波風のない平凡な日々が僕等の絆を刻む。 時計の針より深く早く、 僕のこころは切り裂かれてゆく。 君がそこにいることを確かめる。 冷たい足を絡ませる。 髪の匂いを吸い込む。 少なくとも、 僕がここにいることが確かなら、 君もここにいるみたいだ。 君が本当にここにいるなら、 僕もここにいるらしい。 それだけを確かめて、僕等はやっと眠りにつける。 明日のことは、明日考えよう。 君はそうは思っていないかも知れないけれど、 今を確かめられれば、僕は今日という一日を完成できる。 それが、平凡な生活というものなのだ。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |