-殻-
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昨晩、某TV局で大々的にやっていたIQテストに、僕も挑戦してみた。
彼女の部屋で、早めに夕食を済ませ、 ネットから解答用紙をダウンロードして、 ボールペン片手に準備万端。 自慢ではないが、僕はこの手の問題を解くのは概して得意な方だ。 それに、誰しも自分の才能を数値化して、他人と比べてみたい願望があるだろう。 僕も彼女も例に漏れず、食い入るように画面を見つめて問題に挑んだ。 スタジオでは、何とも言いようのないグループ分けをされた集団が競う。 カテゴライズの仕方というのは様々だが、程度が知れるというものだ。 まあ、娯楽なのだからそれでいいと言えばいい。 しかし、結果を見ると、「やっぱり学歴だ」と言っているように感じてしまう。 「これは自分の適性を知るために役立つ」などと司会者はのたまっていたが、 番組の最後では「都道府県別のIQ」「血液型別のIQ」「星座別のIQ」と、結局数字の大小しか比較の対象にならない。 もちろん「適性」云々はTVとしてのexcuseなのだろうから、それもいいと言えばそれでいい。 はっきり言って、視聴者も見たいのは数字だろう。 番組の趣旨や作りに不満を言っても始まらない。 僕自身、その数字を楽しみに番組を見ていたのだから、 それは需要と供給というヤツで、それでいいのだ。 ただ、こうしたデータを集計する際には常に「母集団」が問題になるのは、 社会学者でなくとも知っているだろう。 この番組における母集団はなんだったろうか。 リアルタイムで集計される全国からのデータは、ネットを通じてのものだ。 そこに集まっているのは、当然「ネットに接続できる環境にある人」からのデータにまず限定されている。 これは正しい母集団だろうか? 無論、答えは「否」である。 僕は、正しい母集団の抽出法について議論したいのではない。 要するに、そのデータには信頼性がない、と言いたいのだ。 ある共通項で括られるコミュニティが一斉に動けば、この程度の集計など簡単に操作できる。 某ファン投票事件や、最近話題になった視聴率操作もそう、 取り立てて特別なことのない商品が妙に売れたり、逆に見向きもされなくなったり。 母集団を正しく取らない現象に、僕等の目は欺かれる。 それも、いとも簡単に。 ある種の情報操作は、常にどこかで行われている。 誤差と呼ぶにはあまりにも大きい振れ幅で、世間は偏ってしまう。 何を信じるべきか。 情報とは一体なんだろう? などと考える一方、僕と彼女はお互いがかなり良いIQを叩き出したことに満足して、 熱い風呂に入って気持ちよく眠った。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |