-殻-
INDEX| PAST| NEXT| NEWEST
愛はなく、希望もない。
そんな感情はまやかしで、常に何かに置換できる程度のものだ。 どう名付けるか、それだけが心の揺れに共感と言う幻を喚起する。 分かり合うなど、できるはずがない。 そうありたいと願えば願うほど、ひとりに気付くだけだ。 閉じ込められた監獄の中で、足掻けば壁にぶつかり、 壁を越えようとよじ登れば爪は剥がれ、落ちて傷つく。 動かずにいれば、気付かずに済むかも知れないのに。 孤独。 隔絶。 そして、絶望。 あまりにも正しいその唯一の自己肯定は、満たされることがない。 愛はないと言いながら、君と僕はどうしようもないほど渇望している。 愛されることを。 代償のない感情を。 存在の全肯定を。 僕等は、互いに求めているだけなのだ。 与えることができず、言葉を閉ざして待つだけなのだ。 そして、何よりも哀しいことに、 その絶望的な断絶を共有することが、僕等の唯一の絆なのだ。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |