-殻-

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2003年05月02日(金) 木蓮

君を突き放した目で見ないと、流されてしまう。
その甘い声に惑わされると、僕はまた弱くなる。

繰り返さないためには、そうしなければ。
でもそれが君を迷わせ、言葉を失わせる。

君は答えを求めている。

なのに、察しのいい君は、
僕が逃げ腰なのにとっくに気付いていて、
決定的な問いを口にしない。

僕は君の優しさや、
ささやかな憧れや、
時折感じる弱さや、
そういうもの全部を、
受け止める自信がないんだ。

答えを急がれる生き方は性に合わなくて、
いつでも選べるような余裕を求めてしまう。


君が僕に、まるで子どものように抱きついて、
ちょっとだけ淋しそうな顔をした。

それに応えてあげることはできたはずなのに、
アタマに余計な回路が挟まっている僕は、
つい意地を張ってしまう。

済んだことを穿り返して責めることは容易い。
でもそれは何も産み出すことはない。
許すことだけが、次を造る。


信じているかと訊かれたら、
僕は信じていると答えるだろう。
だけど、信じ続けて行けるかと訊かれたら、
言葉を失ってしまう。

何故だろう。


君と行った春の山の斜面には、
萌え出す若葉の中で浮き上がるように、
木蓮が散り際の輝きを放っていた。

日一日と、葉の緑さえ色を移す。

そんな風に、
ひとの気持ちも季節の移ろいと共に変わる。

それは、僕がよく知っている。
知っているから、怖いのだ。


また失うこと。
そして、失わせてしまうことが。



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