-殻-
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巡り巡る日々は、
ぐるりと回ってまた元の場所へ。 いつか見た景色に辿り着く。 この風を知っている。 すぐに雨になりそうな、 重い、飽和した空気。 落日を見届けられない、 霞んだ山の稜線。 あの時感じた不安さえ、 鮮やかに刻まれている。 早まる鼓動がはっきり聞こえて、 頭の奥がぎしぎしと悲鳴を上げる。 なのに、 一体この景色を見たのがいつだったか、 全然思い出せない。 隣にいたのは君? それともあのひと? あるいは、誰もいなかったんだろうか。 僕は、誰かといたと思い込んでいるだけだろうか。 ひょっとして僕は、 ずっとずっとひとりだったんだろうか? 同じ景色だ。 もう、思い出せないくらい。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |