-殻-
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僕は、図らずも復讐を完成させてしまった。
創製と破壊。 あのひとが背負うものを、僕は君に背負わせた。 それで、つまりは完成なのだ。 僕が背負っていた呪いは、君によって解かれた。 だから今なら、僕はあのひとにきちんと向き合えるのだ。 なのに、あのひとはもうここにいない。 そうやっていつもいつも、 僕は過去を追い駆け続けて行くのだろう。 君はこの復讐には気付いていない。 ただ、自分の価値を自分で知ったことで、 ひとり満足している。 お互いの存在価値は、大きく変わっている。 変わってしまったのだ。 僕が束縛を感じている。 君は依存を許されている。 共に過ごす時間は肯定され、 日常に流れていく。 僕等の知らないうちにどこかに流れていった、 小さな小さな出来事と同じように。 だけどもう少しだけ、 僕は知らないふりをしていよう。 もうすぐ来る春を君と迎え、 忘れ得ぬ傷に君が気付くまでは。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |