-殻-
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束の間、君は繋がっていたんだ。
僕の命と。 春も間近い、白い部屋で、 君は僕を見ていた。 池の向こう岸には、 綻びかけた桜の花。 儚く消えてゆく、 ほんの一瞬の、 夢か幻か。 でもそこにははっきりと、 僕等が残した傷跡がある。 それは実は、 ささやかな共存の証で、 だけど僕等はそれに気付かず、 失くして初めてその存在を知ったのだ。 いつかまた春が巡り、 その時は来るのか。 僕は、 飲み込まれる不安ばかりが溢れてきて、 流れに身を任せられない。 春の風が吹いている。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |