-殻-

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2003年03月03日(月) また春が来る

・・・

・・・。

ん。
アラームの音だ。

あ、僕の携帯だ。

僕は布団から抜け出して、
君の洋服タンスの上に置いてある携帯に手を伸ばす。
いつものように、時計は午前6時を示している。

僕は携帯を片手に、また君の眠っている布団の中に潜り込む。
君はふっと目を覚まして、一つ寝返りを打つ。

僕の方に身を擦り寄せたかと思うと、もうすうすうと寝息を立てている。

カーテンの隙間から、明るくなりかけた空が覗いている。
随分と夜明けが早くなった。
ほんの少し前までは、真っ暗なうちにこの部屋を出ていたのに。

時間は確実に流れ、季節が巡る。
当たり前のことが当たり前に起こっているだけなんだ。


うつらうつらとしては、携帯のアラームに起こされるのを
5,6回繰り返すと、出かける支度をする時間だ。
君を起こさないように布団を抜け出して、シャワーを浴びる。

今は車があるから、朝も前よりゆっくりできるようになった。
無理をするだけじゃ、続けてはいけない。
お互いにやるべきことがあるんだ。
勢いにまかせて、がむしゃらに追いかけていられるほどは若くない。

僕がシャワーから出ると君は目を覚ましていて、
トーストを焼いてくれる。
あまり時間はないけど、インスタントのコーヒーといっしょに、
僕らは焼きたてのトーストをかじる。

もう行かなくちゃ。
コートを羽織って、僕は出かける。
いつものように、出がけに新聞を抜いて君に手渡す。

「いってきます。」
「いってらっしゃい。」

いつのまにか、こんな風に言葉を交わしている。


去年の今頃は、僕はまだこの国に帰ってきていなくて、
忙しい日々を送っていた。
君と再会したのは4月の末だった。
そう、まだ1年も経ってはいないんだ。

君を変え、僕を変え、
残酷なほどに取り返しがつかないまま、
時はざくざくと僕らを刻みつけて行く。

また春が来て、すぐに夏が来て、
君は巡り、僕は巡り、罪も巡る。


いずれ僕は贖うことになる。
ささやかな、ささやかな、この罪を。



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