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遺書と屍
羽月
MAIL

My追加

2010年04月29日(木)




メールを返さないわたしのエゴなりに、真剣にあなたに返事をしようと思う。
不特定多数に発信する文字だから、誰がどう取ってもらっても自由だけれど。
知ってるから、いいんだ。
ことばは、ただしくつたわらない。
だから、わたしはリアルで顔を知っている相手とするメールが嫌いだ。電話も嫌いだ。
(だからといってあなたのメールやあなたが嫌いだと言っている訳ではなく、)
言葉が、正しく伝わらない気がするから。

顔を見れば言葉がちゃんと伝わるかなんて、やっぱりそれも思い込みにしか過ぎないのだけれど。

*

あなたを救えないって、昔言ったと思う。
だからわたしの言葉は、きっとあなたを切り裂いていくばかりだと思う。
聞かなくていいし、読まなくていい。唾棄したっていい。このページを閉じてしまえば、いつだって全部終わりだ。
あなたは選ぶことが出来る。いつだってそうだった。

もう一度言うよ。わたしは、きっと、あなたを切り裂いていくばかりだと思う。
結局わたしを殺すのがいつだって、いつまでも、これからもわたしだったように、結局、あなたを殺すのは、あなたを守るのは、あなたしかいない。
目を閉じるのも、耳を塞ぐのも、決めるのはあなただ。

わたしに解を求めるなら、わたしを揺らすなら、誰かを揺らすなら。
やっぱり、いつだって代価がいる。
高みの見物なんて、やっぱり出来ないんだから。
それでも、選ぶことは出来るよ。酷いことを言うよ。さあ、選んで。


*


一つだけ、聞いてもいい?
あなたを、言葉を、聴いて欲しい相手は、本当にわたしですか?
わたしは、あなたが欲しがっているのは希望なんかじゃなくて、繋がりなんだと思うよ。
手を繋ぐ相手は、本当にわたしですか?
言葉を我が身のように感じるのは、痛むのは、あなたに傷があるからだと言ったよね。あなたの心が血を流しているから、あなたの心に傷があるから、あなたの心が痛むんだ。だから、熱を感じるんだ。
そう、わたしの言葉は、誰かに対する鏡でしかない。
あなたがあなたのことを知ってほしいのは、本当はわたしではなく、他の誰かなんだろうと思う。
わたしたちの体温は所詮36度5分程度、あなたを焼き尽くすには温すぎる。

月並みなことでも言おうか。
愛し方を知りたいのなら、まずは自分を愛さなくちゃいけない。
自分を愛さない人間を、他人は愛さない。
かなしいけれど幸いなことに、どれだけ酷く扱っても、わたしはわたしから離れていくことはない。
そう、たとえ手首を切っても、首を吊っても、だ。
死ねなかったよ。
怖かったもの。
明け方の空だった。
寒々しく冴え渡る、朝だった。
どうしようもなく暗い、夜だった。
死ねなかったことを酷く呪って、泣き喚いた夜だった。
リボンを握った右手は、死ぬのが怖くて手を離したんだ。
怖かった。
きっと後もう少し、強く握っていられたのならわたしは死んでいただろう。
怖くて、憎らしくて、生きていられたことに安堵した。

世界は、残酷で、無慈悲で、穏やかで、緩やかで、どこまでもわたしたちを突き放す。
どれだけの絶望が覆っても、どれだけの悲しみが襲っても、誰にも平等に朝が来る程度には。
誰も誰かにはなれないし、何かにもなれない。それを知らせるのは、とても残酷だけれど。

*

温度なんかないって言ったけど、本当はそれを得るのはとても簡単なんだって知ってた?
画面越しではない、誰かと声を交わすこと。手を、繋ぐこと。
ほんとうは、それが一番手っ取り早い。
それが怖いなら、あまりお勧めしたい方法じゃないけど、あなたが言うように、まずは壊してみたらいい。あなた自身を、あなた自身の言葉で。
わたしが首を吊ったのと同じように。
わかるよ。
壊れないことが、壊せないことに対する絶望が、あなたが愛したい誰かが、そんなに弱くないことも。
掻き毟るような痛みと共に、きっと、産声が聞こえる。