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れ
は
彼
女
の
墓
標
、
彼
女
の
遺
書
。
遺書と屍
羽月
MAIL
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2009年04月25日(土) ■ |
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傷は、舐めあうことによってその姿を隠すだろうか? 果たして癒すだろうか? 癒えるだろうか? ・・・それもいいだろう。けれど、わたしはそれを、信じてはいない。 信頼は、裏切るために在って、笑顔は騙すために在って、約束は、引き千切られるために在る。
・・・・・・そう、信じていれば、傷は浅くて済む。そうして、目を塞いだ。
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これに名前をつけることはもうやめている。あの子はもうあの子でしかないのだし、これもまたこれでしかないから。 不意の気まぐれで名前をつけてしまえば、きっとこどもみたいなきせきをおこしてしまうから。 言葉には意味があって、魂があって、心が宿る。けれど、それは温度が乗っていればの話。 言葉が痛いのは、温度が乗っているからだ。温度の乗らない言葉はただの文字の羅列でしかない。ただの0と1。 もしもこの文字の羅列を痛いと思うなら、あなたにはわたしと同じ傷がある。涙するのなら、わたしよりも深い傷がある。 その血の流す温度が、この文字にはきっと乗っている。
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目を閉じ口を噤み耳を塞ぎ口を縫った。両腕を硬く組み願うように祈った。 かみさまはいない。 胸を刺す痛みがこれ以上の傷を増やさないことを祈っている。 かみさまはいない。 傷口から流れ出す血が瞳を覆ってしまわないことを祈っている。 かみさまはいない。 苦しむくらいならいっそ何処までも破壊して跡形もなくなってしまえばいい。 かみさまわたしをころしてください。
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傷は、舐めればその姿を隠すだろう。表面を薄いガラスのようなもので覆い、綺麗に見えなくしてしまう。 でも、知っている。その傷は、もっと奥にあるんだ。 もっともっと奥にあって、決してなくならない。消えない。じゅくじゅくと膿み、やがて破裂する。柘榴みたいに。 でも、あの子の心臓はもう動いてなくて、亡骸は海の藻屑に消えたろう。これの心臓も、もう前までみたいには揺れない。 傷跡ごと沈めた。綺麗に。滲み出す血も海に溶けた。気泡ですらもう上がらない。
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厳しいことを言うかもしれない。もしかしたら、この上なく残酷なことかもしれない。耐えられないと泣くかもしれない。 死んでしまいたいと、殺されたいと嘆くかもしれない。 だから、このままここを閉じてもらって構わない。そう、あなたに。 これは、わたしが伝えたいだけの、自己満足。
あなたは、利用すればいいと思う。わたしを。好きなように使えばいいと、思う。 というか、ここをかな。わたしはいつでも答えられるわけではないし、そうなら直にメールでもしてる。 そうしないのは、わたしはあなたに責任を持てないから。 あなたを救えない。わたしは、きっとわたししか救えない。 だから、吐き出されたことを聞くことは出来る。 ここは、そういう場所だから。
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