友とは何か。愛とは何か。

MAD TIGERの
のも ...
〜〜  ヲ タ ク の 魂 1 0 0 ま で  〜〜


2004年09月30日(木) 伊右衛門様

イエモン茶をがぶ飲みしたいSYO-DOに駆られているMADですがこんにちわ!
今日は勢い余って昼間に書いちゃうぞ―――!!!


読んでいた小説、久々に★5つが出ました

京極夏彦著【嗤う伊右衛門】★★★★★

です。
昨日の夜、風呂に入れ、ゴミ捨てに行けと言われ、詰られ、罵られて(?)も読むのが止められなかった。
文章としては決して難しくもないが、簡単でもない。でもそれを乗り越えて一気に読みきらせる作品。

内容は一言では言いづらいが、キャラとして出てくるのは男前の伊右衛門。
おそらく主人公。
病気によって顔半分が爛れ「膿がじくじくと溢れる」が、それを一切気にしない岩。おそらくヒロイン。
あとがきの解説を読んで知ったんだが、これは四谷怪談に出てくるキャラらしい。
それは有名な「皿を割って殺されたお岩」だけでなく、伊右衛門というのもそのままキャラとしてあるようだ。
その程度しか四谷怪談に対して知識のない自分だが、それにしても「皿を割って殺されたお岩」の
キャラクターと、京極さんの岩とのギャップが凄い。
京極岩は。気性が荒く、暴力的で、短期で、くよくよせず、
かといってそれらが顔の異変を後に出た性格というわけではない。
美人であった時から自分の容姿になど無頓着で、サバサバとした性格。

 ――わしは間違うておるじゃろうか。
 岩は自問する。
 確かに損な性分ではあろう。それは岩も自覚している。悲惨なる己の不遇を呪い悲しんで、
 日夜泣き濡れて暮らしていたならば、世間の目も違っていただろうとも思う。
 そうして顔を隠し家に籠っていたならば、世間も寧ろ憐憫の情を以って迎えてくれたかもしれぬ。
 あれ程の器量良しが、何の因果でそのように――と、涙のひとつも零してくれたやもしれぬ。
 しかし同情されることに何の意味があろう。(角川単行本P53-56)


京極岩は格好いいんですよ。はっきり言って、最後まで格好良い。


伊右衛門はクールな武士かと思っていたが、意外とアツかった。そして、腰が低かった。
相手を見て、きちんと分別を弁えた態度をとっているというか。
誰も伊右衛門が笑ったところを見たことが無い。
伊右衛門が最後に笑った時、それは一番幸せだった時なのだろうと思う。


そして、この二人にからむ付線が凄い!!
それぞれの話が同時進行しているから、理解するのも大変だが、その大変さを乗り越える価値はある。
話よって視点が変えられる三人称だから、たくさんのキャラクターの気持ちがわかる。
ただ、あくまでもキャラの視点に立った三人称なので、そのキャラの「偏見」やら「意見」に偏りがち。
それが嘘か真かは、読み進めていかないと解らない。
屈折した想いがキャラクターそれぞれにあり、それ故奇行に走る悲しみが、いたるところに散りばめられている。




終わり方は、涙がうっすら滲んで胸が痛くなる。悲しさと一緒に、なんだか喜びも感じられる。
ホラーやサスペンスというよりも、時代恋愛小説。恋愛小説と言い切ることも可能。
終わり30ページくらいはもうイッキに読まないと気がすまなかった。
そして以前貴志氏の小説「黒い家」を読んだときのように、動機が激しくなるという久々の症状が出た。
終盤、伊右衛門が初めて笑った時の文章にゾッとした。
間と、文章。美しさと、不快感。すべてが最高の表現である。







これほどまで凄い作品を読むと、自分の文章の稚拙さに腹が立つな。
話としてもそうだし、評価として文章を書くのも腹がたつ。
まったくもってバカ頭ですよ!自分は!!←何

もうね、★五つ。どころか6つでもいいくらいです。
読んだほうがいいですわい。




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