イエモン茶をがぶ飲みしたいSYO-DOに駆られているMADですがこんにちわ! 今日は勢い余って昼間に書いちゃうぞ―――!!!
読んでいた小説、久々に★5つが出ました
京極夏彦著【嗤う伊右衛門】★★★★★ です。 昨日の夜、風呂に入れ、ゴミ捨てに行けと言われ、詰られ、罵られて(?)も読むのが止められなかった。 文章としては決して難しくもないが、簡単でもない。でもそれを乗り越えて一気に読みきらせる作品。
内容は一言では言いづらいが、キャラとして出てくるのは男前の伊右衛門。 おそらく主人公。 病気によって顔半分が爛れ「膿がじくじくと溢れる」が、それを一切気にしない岩。おそらくヒロイン。 あとがきの解説を読んで知ったんだが、これは四谷怪談に出てくるキャラらしい。 それは有名な「皿を割って殺されたお岩」だけでなく、伊右衛門というのもそのままキャラとしてあるようだ。 その程度しか四谷怪談に対して知識のない自分だが、それにしても「皿を割って殺されたお岩」の キャラクターと、京極さんの岩とのギャップが凄い。 京極岩は。気性が荒く、暴力的で、短期で、くよくよせず、 かといってそれらが顔の異変を後に出た性格というわけではない。 美人であった時から自分の容姿になど無頓着で、サバサバとした性格。
――わしは間違うておるじゃろうか。 岩は自問する。 確かに損な性分ではあろう。それは岩も自覚している。悲惨なる己の不遇を呪い悲しんで、 日夜泣き濡れて暮らしていたならば、世間の目も違っていただろうとも思う。 そうして顔を隠し家に籠っていたならば、世間も寧ろ憐憫の情を以って迎えてくれたかもしれぬ。 あれ程の器量良しが、何の因果でそのように――と、涙のひとつも零してくれたやもしれぬ。 しかし同情されることに何の意味があろう。(角川単行本P53-56)
京極岩は格好いいんですよ。はっきり言って、最後まで格好良い。
伊右衛門はクールな武士かと思っていたが、意外とアツかった。そして、腰が低かった。 相手を見て、きちんと分別を弁えた態度をとっているというか。 誰も伊右衛門が笑ったところを見たことが無い。 伊右衛門が最後に笑った時、それは一番幸せだった時なのだろうと思う。
そして、この二人にからむ付線が凄い!! それぞれの話が同時進行しているから、理解するのも大変だが、その大変さを乗り越える価値はある。 話よって視点が変えられる三人称だから、たくさんのキャラクターの気持ちがわかる。 ただ、あくまでもキャラの視点に立った三人称なので、そのキャラの「偏見」やら「意見」に偏りがち。 それが嘘か真かは、読み進めていかないと解らない。 屈折した想いがキャラクターそれぞれにあり、それ故奇行に走る悲しみが、いたるところに散りばめられている。
終わり方は、涙がうっすら滲んで胸が痛くなる。悲しさと一緒に、なんだか喜びも感じられる。 ホラーやサスペンスというよりも、時代恋愛小説。恋愛小説と言い切ることも可能。 終わり30ページくらいはもうイッキに読まないと気がすまなかった。 そして以前貴志氏の小説「黒い家」を読んだときのように、動機が激しくなるという久々の症状が出た。 終盤、伊右衛門が初めて笑った時の文章にゾッとした。 間と、文章。美しさと、不快感。すべてが最高の表現である。
これほどまで凄い作品を読むと、自分の文章の稚拙さに腹が立つな。 話としてもそうだし、評価として文章を書くのも腹がたつ。 まったくもってバカ頭ですよ!自分は!!←何
もうね、★五つ。どころか6つでもいいくらいです。 読んだほうがいいですわい。
MAD TIGER地味作品集
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