女の世紀を旅する
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2008年12月19日(金) 代替エネルギーとオバマ新大統領が密かに仕込むトリック

「1ドル=50円台時代」の到来と保険業界の激震  原田武夫
Y! V 2008/12/10(水) 11:59

 



 米国における自動車大手3社(ビッグ・スリー)に対し、来年(2009年)1月末くらいまでは“延命”するためのブリッジ(橋渡し)法案が今週中にも米連邦議会で採決に回されるかどうかに焦点があてられている。これを受けて、現状の1ドル=92円台から95円台程度までの円安ドル高へ復帰するのではないかとの観測も一部には流れ始めている。

  しかし、こうした見通しが有効なのはあくまでも“極超短期”であることを忘れてはならない。去る12月6日から7日にかけて、オバマ米次期大統領は大手メディアに出演するなどして、自らの景気対策につき具体像を示し始めた。だが、そのために一体いくらの費用がかかるのかについて一切明らかにしていない。そのため市場関係者の間では「結局は絵に描いた餅に過ぎない」との見方が広まりつつある。

  もっと現実的な見方をする向きが注目しているのは、昨年夏より露呈し始めた現下の金融危機が始まる前の段階ですでに邦貨換算で6000兆円余りにも上っていた米政府の財政赤字について、オバマ次期大統領が就任するや否や「デフォルト(国家債務不履行)宣言」を行わざるを得なくなるか否かである。正確にいえば、「デフォルト宣言をするか否か」というレベルの議論ではなく、これが行われることを前提としつつ、「一体いつ行われることになるのか」にむしろ焦点が当てられつつある。

  オバマ次期大統領にとって“傷”が最も浅くて済むパターンが選択されるならば、来年(2009年)1月20日の大統領就任直後に「デフォルト宣言」ということになる可能性が高い。なぜならば、そうすることでオバマ新政権はそれまでの財政赤字の累積に対してはいわば免罪符を得る中、「CHANGE(変革)」の標語にふさわしい刷新策を続々と打ち出すことが可能になるからである。これに対し、最悪のパターンとなるのが、財政赤字の問題にはいったん目をつむり、とりあえずは景気浮揚策を打ち出すものの、結果的には財政負担の重圧に耐えられず、遅くとも6月までに「デフォルト宣言」を行うというもの。この場合、オバマ新政権に対する期待が一気に失望へと変わるため、マーケットでは米国債、そして米ドルが投げ売りになるとの観測がある。「その場合、1ドル=50円台も目指す可能性がある」(国内投資家筋)との現実主義的な見方も聞かれるようになっている。

  米国債が投げ売りになった場合、米財務省証券について中国勢に次ぐ第2位の保有を誇る日本勢(統計上はJAPANと記載)も当然“無傷”では済まないはずだ。しかし、米政府が公表している統計上、JAPANというカテゴリーで日本の民間セクターが一体どれくらいの米国債を保有しているのかはつまびらかではないのである。

  この点について現在、日本の主要各社が公表している財務諸表を点検してみる。すると、細かなことは判明しないものの、生命保険セクターが最大で10兆円、メガバンクが同じく最大で約10兆円程度、これに対し損害保険セクターが最も多くて4.3兆円ほどの米国債をそれぞれ保有していることが判明する。―――大変気になるのが、生保と損保との間にある明らかな“ギャップ”である。そこからは、米国債がデフォルトになった場合、日本の生保業界に大激震が走る一方、損保業界は生き残るという「青写真」が見えてくる。つまり、有り体にいえば来年1月以降、日本の保険セクターでは「損保が生保を食う」というこれまでは想定外の事態があり得るわけである。当然、それは“救済”という名目のM&A(企業買収)ということになり、日本株マーケットで巨大なマネーの「潮目」を作り出すに違いない。

  ちなみにこうした事情は必ずしも日本だけのことではない。ドイツでは現在、金融監督当局より11月20日付で国内保険各社に対し、「12月22日から来年1月11日までの間、各社経営幹部に対して必ず連絡が取れる携帯番号を教えること」という極秘の通達が出されているという情報がある。ドイツ政府はその理由などにつき、多くを語ってはいないようであるが、考えられる最悪の事態は米国における金融メルトダウンがさらに進む結果、米保険大手に何らかの形で激震が走り、その結果、世界的に保険業界の再編が進むというシナリオであろう。単純に資金繰りの悪化といった金融マーケット上の理由だけではなく、(通常は考えられないが)ある種の自然現象やテロによる保険金支払いの急増など、あらゆる可能性を考えておくべき局面が到来している(ちなみに11月26日に発生したインド・ムンバイの同時多発テロにより、保険金支払いをめぐり現地で最も混乱しているセクターの一つが保険業界である)。

  クリスマス、そして年末年始と浮かれ気分になりそうな季節だが、その陰で着実に進んでいる「米国債」「米ドル」、そして「保険セクター」をめぐる展開から目が離せない日々が続くことになりそうだ。


●米トリビューン社破産と日本マスメディアの暗雲
Y! V 2008/12/09(火) 11:57


  12月8日、シカゴ・トリビューン紙やロサンゼルス・タイムズ紙といった米国有数の新聞を発行しているトリビューン社が、米連邦破産法11条による「破産」を現地裁判所に対して申請したことが世界中で静かな衝撃を呼んでいる。とりわけ日本のマスメディア業界に与えるインパクトは測りしれないものがある。なぜなら、今回の破産申請は「有名マスメディアであり、かつ多角経営を行っていても、破たんする企業は破たんする」という冷厳な現実をまざまざと見せつける出来事だからである。「米有名メディアの破産は、所詮“対岸の火事”だ」―――そう考えると、2008年度3月期決算を控え、日本を含む各国のメディアを等しく襲っている大きな「潮目」を完全に読み違うことになる。

  新聞や雑誌といった紙媒体による活字メディアは昨年から今年夏までにかけて急騰した原油価格の煽りを受け、一方で用紙価格の高騰、他方で輸送価格の値上がりという“二重苦”に苦しんでいる。そのため日本では、たとえば去るゴールデンウィーク(5月)明けに販売価格の切り上げを打ち出した有名週刊誌が登場するなど、苦肉の策が相次いでとられている。しかし、値上げは消費者である読者が好むはずもなく、米国発の金融メルトダウンの中で懐が寒くなっている中、読者層がかえって激減するという最悪の事態が生じている。この秋から冬にかけて、有名月刊誌・週刊誌が休刊という名の実質廃刊に追い込まれているのはそのせいだ。現在も発行を続ける某有名出版社の週刊誌などは、1誌だけで昨年度総計15億円もの赤字を計上したと聞くから驚きである。

  もちろん、中身で勝負しようとする雑誌メディアもあるが、そうなると自ずから「より過激なもの」「より刺激的なもの」を求めるあまり、時に薄弱な根拠に基づくスキャンダル報道に走りがちとなる。その結果、名誉毀損に基づく損害賠償請求、すなわち「訴訟」に巻き込まれるリスクが異常なまでに高くなっており、これがまた雑誌メディアにとって重い足かせとなっている。「(訴えられる前に被害者側弁護士から届く)内容証明は勲章だ」などと豪語するテレビでもおなじみの有名週刊誌編集長がいるものの、芸能人化する編集長を尻目に部下である編集者・記者たちはますますやる気を失っているのが現状だ。

  それでは同じマスメディアでもテレビはどうかというと、状況は正に惨憺たるものである。開示されている在京キー局の08年度第2四半期決算がそのことを如実に物語っているが、その原因として業界関係者の間で真っ先に指摘されているのが自動車メーカーによる広告の激減だ。米自動車大手3社(ビッグ・スリー)に対する公的救済だけではなく、日本の大手自動車メーカーも対米輸出の不振で青色吐息になっていることが問題化しつつある中、自動車セクターは全世界でまずは広告費の大幅削減へと乗り出しているのである。これまでの原油価格高騰や温暖化効果ガス削減といった締め付けで、ますます自動車は売れなくなっており、こうした傾向はまだまだ続くものと考えられよう。

  これに追い打ちをかけるように、日本のテレビ業界を11年までに襲うのが「地デジ化」という“潮目”である。地上波デジタル放送への転換が先行している英国では番組登録のために国民一人当たりが年間費やす時間は何と1週間分に相当するとの調査が公表されている。また、来年2月には米国でも「地デジ」への完全移行が達成されるが、そうなった場合、もはやテレビを見ないと答える人が続々と現れているとの調査もある。こうした海外での風雲急を告げる事態を見て、日本のテレビ業界は正に戦々恐々だ。10年度には各社共に赤字への決定的な転落が必至とみられているだけに、インターネットへのコンテンツ提供や、映画やイベントの主催など、本業ではない「放送事業外収入」という別腹を満たそうと躍起になっている。だが、それがまたテレビのエンタメ化を過度に進めてしまい、視聴者離れを進めてしまうという逆効果を招いている。

  総務省によれば、日本人を取り巻く情報量は04年の段階で10年前(1994年時点)と比較すると実に400倍になっている(平成17年度情報流通センサス調査)。その後のブロードバンド普及を加味すれば1000倍近くなっている可能性がある。つまり、日本人は今、情報化社会ならぬ、情報“過”社会に生きているのだ。本来であれば、だからこそ情報を濾過してくれるマスメディアがより求められるはずなのだが、とりわけ日本の大手マスメディアはいずれも「潮目」を読み違い、収益を極端に悪化させ続けている。

  「08年度3月期決算は果たしてどうなるのか」―――マスメディア業界では今、密かにその話で持ち切りである。米トリビューン社とならんで、日本ではどのメディアが真っ先に「破たん」の憂き目にあうのか。目が離せない。


●代替エネルギーとオバマ氏が密かに仕込むトリック
Y! V 2008/12/08(月) 13:07


  去る12月6日から7日にかけて、オバマ次期米大統領は自らの景気対策案を対外公表した。それによれば、2011年までに少なくとも250万人の雇用を生み出すことが目標とされており、そのためにはアイゼンハワー大統領以来の大型インフラ投資を行うのだという。

  景気対策を行うためにはそれにかかる費用を賄うため、資金調達を行う必要がある。しかし、「空前絶後」となるはずのオバマ流景気対策案について一体いくら要するのか、オバマ次期大統領自身は具体的な数字を示していない。これに対し専門家の中では、少なくとも5000億ドル(邦貨換算で約46兆円)ほどかかるのではないかとの推測が早くも流布している。

  昨年5月末の段階で、邦貨換算すると6000兆円弱もの財政赤字を抱えていたといわれる米政府の国庫にいったいそのような余裕があるのかと大いに首を傾げたくなるが、オバマ次期大統領はそうした見方を一蹴するかのように、「目先の財政赤字を気にするわけにはいかない。景気対策が経済押し上げの効果を持つよう十分な規模にしなければならない」(7日米NBCインタビュー)と述べた。すっかり強気なオバマ次期大統領であるが、債券分野では世界最大級の規模を誇る運用会社PIMCOは今年1月の段階で「景気対策のために財政赤字を拡張することは、失われた10年という長期停滞を免れなかった日本の二の舞になるため、止めるべきだ」との提言を行っている。このことは、米欧系の“越境する投資主体”たちは、さらなる巨額な財政赤字を容認する施策をオバマ新政権がとり始めるや否や、マーケットであからさまにネガティブな対応を示す可能性が高いことを如実に示していると言えるだろう。

  そうである以上、オバマ次期大統領としては、景気後退という米国国内の論理だけでは身動きが取れなくなる可能性が高い。そこで、むしろ国外からのプレッシャー(圧力)を前面に出しつつ、巨額の景気対策を推進し、これをもって最大の懸案である失業率の悪化を抑えようとするものと考えられる。

  そうした「国外からのプレッシャー」として利用される可能性のもっとも高いイベントが、来年(2009年)11月末からコペンハーゲン(デンマーク)にて開催される気候変動枠組条約・第15回締約国会合(COP15)なのである。結局、何らの成果ももたらしていないポズナニ会合(COP14)と異なり、来年のCOP15では、温暖化効果ガスに関する各国の削減義務を定めた「京都議定書」の改定問題が全面的に議論される見込みだ。これまで、全く後ろ向きな対応に終始してきた米国に対する風当たりがそれに向けて強まっていくことは必定であり、オバマ新政権は就任早々から、そうしたプレッシャーにさらされるというわけである。

  実のところ、オバマ陣営はすでにそうした展開を織り込み済のように見受けられる。なぜなら、11月頭に終了した大統領選の最中にアップしていた政権公約の中で、「500万人分の雇用を確保するため、代替エネルギーへの転換を急ピッチで進める」旨を既に約束しているからだ。つまり、代替エネルギーへの大転換を国際的に公約すれば、それがすなわち雇用対策となり、内政面でポイントを稼げることがあらかじめ仕組まれているのである。仮に国内で財政赤字累積に対する批判が高まったとしても、オバマ新政権としては「世界に約束した以上、代替エネルギーへ転換せざるを得ない」と言い切るに違いない。そして米国がそうした方向に動く以上、同じく京都議定書の削減義務を全く果たしていない日本も追随せざるを得なくなることは間違いないのであって、これにより「代替エネルギー」セクターは全面開花へと向かっていくこととなろう。

  しかし、それでも気になるのが、オバマ次期大統領が政権の座につく来年1月20日と、こうした外圧を利用できるようになるCOP15が行われる11月末までの「タイムラグ」である。その間、雄弁なオバマ次期大統領が財政赤字累積に対する批判をかわせるのか、あるいはいよいよ行き詰まり、「デフォルト(国家債務不履行)宣言」を行わざるを得なくなるのか。―――年明け早々より、いかなる“潮目”の予兆も見逃せない。


●欧州大幅利下げの陰で進むユーロ暴落というシナリオ
Y! V 2008/12/05(金) 12:01


  12月4日、欧州中央銀行が、ユーロ導入(1999年)以来、最大である0.75%の政策金利引き下げを発表。相前後して英国のイングランド銀行も政策金利を1.0%引き下げた。世界経済の要である欧州勢が一斉に利下げへと踏み切ったことで、止まない金融メルトダウンを少しでも食い止められるかに注目が集まっている。

  しかし、事態を楽観視するのは早計だ。むしろ今回行われた政策金利の大幅な利下げは、これから始まる本当のメルトダウンに向けた「序曲」と位置付けるべきものである。そしてその中で、とりわけ共通通貨「ユーロ」は暴落していく可能性が高まっていると考えるべきなのである。なぜか。

  その理由は、12月中旬まで続く欧州における一連の外交日程の中で、欧州中央銀行をフランクフルトに抱え、実質的にユーロを最も下支えしてきたドイツを徹底かつあからさまに“外す”オペレーションへとその他の有力な欧州各国が入っていくことにある。そうしたオペレーションの頂点となるのが来る12月11・12日に行われる予定のEU首脳会議だ。それに先立って、昨日(4日)、ドイツのメルケル首相は連邦議会本会議で発言。ブラッセルで行われるこのEU首脳会議でドイツ自身の利益を徹底して追求してくる旨の“宣誓”すらしたほどなのである。様々な論点があるが、ドイツは環境に優しい商品を対象とした付加価値税の引き下げに大いに反対していると伝えられている。確かに、これから2009年に向けてますます景気が悪化すると伝えられているのに、最後の砦としての「公的支援」を行う際の財源となり得る租税の引き下げを行うことには大いに議論があるだろう。EUはすでに総額2000億ユーロの景気回復策を打ち出しているが、それを超えてどのような措置を講ずることができるかをめぐり、来週後半には激しい論戦が行われることは必至なのである。

  こうしたドイツの動きに対し、あたかも「火に油を注ぐ」かのように動いているのがフランス、英国、そして欧州委員会だ。来週月曜日(8日)、ブラウン英首相、サルコジ仏大統領、そしてバローソ欧州委員会委員長がロンドンで「ドイツ抜き」の会談を行う予定である。財界の代表者も各国から出席するこの会談に、メルケル首相はそもそも招待すらされなかった。ところが、英仏と欧州委員会はこの場で上記のEU首脳会談に向けた「共通戦略」で合意するつもりだというのである。そうである以上、このEU首脳会談は“和解・合意、そしてそれによる欧州経済全体の復活への一里程”というよりも、“欧州勢の決定的な亀裂に向けた分水嶺”となる可能性が高いとみておくべきだろう。

  問題なのは、このように修復できない亀裂を抱える可能性が出てきているEUが、域内共通通貨としてこれまで育ててきた「ユーロ」も、決してこうした事態の進展とは無関係ではあり得ないということだ。国内不動産マーケットと東欧経済という二つのバブル経済に支えられた好景気が反転し始めたことに苦しむドイツ勢を追い落とすべく画策しているのがフランス勢だ。彼らは自らがEU議長国である今月末までに更なる決定打を打つべく、“一撃必打”の精神で今回の首脳会議に臨んでくるであろう。そうした欧州域内での“覇権争い”は、ユーロに対する信頼を確実に失墜させる効果を持つものなのである。現実に、8月以降、ユーロがとりわけ対円レートで暴落した際には、こうした独仏対立の深刻化が常に顕在化していたのである。

  目先の景況感が陽転したかのように描き出す、今回の同時大幅利下げ。しかし、その背後で本当に進展しつつある、年末に向けた「ユーロ暴落」というシナリオを見失ってはならないだろう。


カルメンチャキ |MAIL

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