女の世紀を旅する
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2004年10月14日(木) 欺瞞を続けた「西武王国」に天罰が下る


欺瞞を続けた「西武王国」に天罰が下る

2004/10/14





●有価証券報告書修正で上場廃止基準抵触、虚偽報告が意図的か否か。

 西武鉄道 <9002> が“防衛ライン”の4ケタ大台を割り込む波乱展開。この日は前日比200円安の881円でストップ安比例配分となり、取引を終えた。出来高は10万2000株で、なお441万3000株の売り物を残した。

 同社は13日、コクドおよびプリンスホテル(いずれも非上場)が両社名義でそれぞれ保有している西武鉄道株式のほかに個別管理の個人名義株式を実質的に所有していることが判明し、保有株比率に関し有価証券報告書などを訂正。前3月期末のコクドによる西武株の保有比率を43.16%から64.83%に、コクド子会社のプリンスホテルによる保有比率を修正し、株主上位10社の保有比率を63.68%から88.57%に変更した。

 東京証券取引所は同日付で有価証券報告書の大幅修正が上場廃止基準に抵触する可能性があるとして、監理ポストに割り当てたが、最悪、上場廃止のケースもあり、一気に嫌気売りを誘った格好だ。東証上場部によれば、「少数特定者持ち株比率80%割れで上場ルールの一つは解除されるが、過去にさかのぼって重大な影響が認められれば、上場廃止もあり得る」としている。

 市場では、「株式分布状況だけが問題なら、(株式持ち合い要請など)打つ手はあるが、虚偽報告の中身が意図的か、事務ミスかで上場維持・廃止の分かれ道になるという。


以下は1995年12月の記事サイトで,西武グループ経営者の堤義明の悪辣経営を糾弾している。10年前の記事であることに注目されたい。



1.税金を払わない西武

(1)創業以来まったく法人税を払っていないコクド

 西武ライオンズ(プロ野球球団)のオーナー、全日本スキー連盟やアイスホッケー連盟の会長、「帝王学」などで有名な堤義明氏は、マイクロソフト社のビルゲイツ氏と“世界一の大富豪”を争うほどの大金持ちである。昨年(1994年)は世界一の座をビルゲイツ氏に譲ったものの、それまでは毎年のように“世界一の大富豪”の座を守ってきた。

 その堤義明氏がひきいる“西武帝国”は、非上場会社のコクド(旧・国土計画)を中核企業とし、西武鉄道、西武不動産、プリンスホテル、伊豆箱根鉄道などで構成される一大企業グループである。西武帝国が日本全国に保有している土地は4000万坪とも5000万坪ともいわれており、その資産価値は、『週刊ダイヤモンド』誌がバブル期に推定したものによれば40兆円におよぶという。それぞれの企業についてみても、例えば全国各地にホテルをかまえるプリンスホテル、苗場スキー場、雫石スキー場などの有名スキー場をいくつも保有するコクド、さらに伊豆箱根鉄道、西武不動産などの顔ぶれをみれば、大儲けを続けている企業ばかりである。

 しかし、中核企業のコクドは、1920(大正9)年の創業以来、法人税を1銭も払っていない。プリンスホテルも同じで、「グループ内で法人税を払っているのは上場会社の西武鉄道ぐらい」と言われている。したがって、これらの企業は、自治体に払うべき法人住民税についても、事業所を構えれば自動的に取られる均等割部分しか払っていない。その均等割の額はわずかである。堤義明氏は、このように税金をわずかしか払っていないことを自慢さえしている。

 コクドなどがなぜ法人税を払わなくても済んでいるのか。そのカラクリについては、かつて、「国土計画が税金を払わない理由」(『AERA』1991年10月8日号)と「世界一の大富豪・堤義明『コクド』の研究−−なぜ『コクド』は税金を払わないのか」(『文藝春秋』1994年9月号。執筆者は立石泰則氏)がくわしくとりあげている。一言でいえば、大企業優遇税制をきわめて巧妙に活用し、徹底した節税対策をおこなっていることである。

 カラクリを要約すれば、こうである。中核企業のコクドなどは、銀行からの借金で事業を進めたり土地を増やすという手法を続けることによって、毎年の経常利益を一定して赤字スレスレの微妙な黒字にしている。そして、グループ企業間で株式の持ち合いを網の目のようにはりめぐらし、グループ内で受取配当金の控除を巧みに調整している。つまり、「赤字スレスレの経常黒字から受取配当金が控除されて赤字の申告所得」(前出『AERA』)となり、結果として税務署へ提出する申告所得が赤字の状態になっているため、法人税を1銭も払わなくてもよいというようになっているのである。

 コクドなどが法人税をいっさい払っていないことについては、当然ながら、「国税当局はなにをしているのか」「税金は取りやすいところから取っているのではないか」などという批判がでている。そこで国税当局も、過去、何回か調査に入った。しかし、西武の“節税”は、国税庁のOB、“優秀な”税理士や公認会計士、弁護士などのブレーンを多数抱えて税制のしくみを徹底的に研究し、緻密な計算・操作によって合法的に課税回避をしているものであり、“脱税”ではないということになっている。つまり、背景には、日本の大企業優遇の税制があり、堤義明氏はこれを徹底的に利用しているのである。



(2)相続税も巧みに節税

 堤義明氏は、法人税だけでなく、堤家の相続税も巧みに節税している。相続税節約のカギは、中核企業であるコクドを非上場会社にしていることである。前出『AERA』はこう記している。

 「非上場で利益の小さい国土計画(現在のコクド)が、上場企業の西武鉄道などを支配する。そして、その国土計画の株式の40%を堤氏が持つという構図。実は、この構図の裏には、法人税のほかに、もうひとつ重要な税金の秘密がかくされている。堤家の相続税問題である。例えば堤氏が個人で西武鉄道の株式を持っていたとする。時価は1株3000円を超えているからたいへんな資産価値である。

 もし、この株の相続が発生すれば、相続税は莫大な額になる。ところが実際の西武鉄道(株)の所有者は国土計画で、株式の評価額は帳簿価格の額面5000円で計算される。土地の場合も同様だ。極めて安い簿価が評価の対象になる。そして、堤氏が所有しているのは、非上場の国土計画株式。非上場企業は利益や試算を基準に時価が算定される。利益が少なく簿価の安い資産を持つ国土計画の場合、それほど高い評価額にはならない。相続があれば極めて安い相続税で済む、ということだ」

 このようにして、堤義明氏は、自らが支配する数多くの企業の法人税を払わないようにするばかりか、巧みに相続税対策を駆使し、「自分の資産を遺産として残し、それが目減りする事なく、代々受け継がれるようにする事」(前出『文藝春秋』)を実現させている。つまり「万全な税対策」といわれる堤式節税の遂行である。

 世界の長者番付を発表している米国の経済誌『フォーブス』は、堤義明氏を、「鉄道のほかリゾート地、24のゴルフ場、世界最大のホテルチェーンのひとつ、プリンスホテルを持っている。おそらく、世界一の金持ちは彼だろう」と紹介している(前出『文藝春秋』)。このように“世界一の大富豪”にあげられているほどの大金持ちが、法人税を満足に払わないし、相続税もわずかしか納めない。−−ここには、日本の大企業経営者の姿勢や日本の税制の不公平さが如実に示されている。



2.国民の税金で大儲けを続ける西武

(1)長野オリンピックと西武

 税金を払わない西武は、一方で、国民の税金を使って進められる公共工事などで大儲けを続けている。
 その一つの例は、1998年に長野で開催される冬季オリンピックである。このオリンピックは「西武のためのオリンビック」ともいわれているように、西武の儲けと密接にかかわっている。

 まず、長野オリンピックにあわせて優先的に建設が進められている北陸新幹線である。国と県が約4000億円を出して工事を進めているが、問題は新幹線の軽井沢駅で、この駅は西武が経営する軽井沢プリンスホテルの真ん前につくられる。駅とホテルの玄関を結ぶ都市計画道路(公道)も2本整備される予定である。おまけに駅のすぐ近くに別の都市計画道路も建設されるが、この道路はプリンスホテルスキー場のゲレンデ前にアクセスされる。軽井沢町はこうした駅周辺の整備費と側道地の建設費として1993年から3年間に80億円を支出する予定といわれているが、こうした公共工事の恩恵を最も受けているのは西武である。

 また、新幹線の長野駅の近くには高層の長野プリンスホテルを建設する計画もある。長野市内につくられる選手村と志賀高原の回転コース会場とを結ぶオリンピック道路(高規格自動車専用道路)も県の予算でつくられるが、この道路の終着点は志賀高原プリンスホテルの真ん前である。おまけに、その工事を請け負うのは西武建設(株)と言われている。

 ところで、北陸新幹線の路線は、当初の計画では軽井沢は通らないことになっていた。理由は、碓氷峠が標高1000メートルを超え、工事が技術的に難しいからである。ところが、計画図を見た堤義明氏が激怒し、当時の運輸大臣に電話をして計画のやり直しを求めたため、軽井沢を通るコースに変更されたといわれている(『週刊新潮』92年11月12日号)。

 同じようにオリンピック開催に関連して上信越高速道路が整備されているが、これも当初計画は軽井沢を通らないことになっていたのに、計画が強引にねじ曲げられて西武グループが経営する世界最大規模のゴルフ場(「軽井沢72ゴルフ場」)にアクセスされた。このように北陸新幹線と上信越高速道路が路線変更されたことについては、「どちらも地元出身の羽田(新進党副党首、元首相)が堤義明氏にプレゼントした」(『日刊ゲンダイ』94年4月29日号)とも言われている。
 そもそも、冬季オリンピックの長野誘致に最も熱心だったのは堤義明氏(当時・JOC会長)であるが、そのねらいは次のとおりである。


 「ひと言でいって、堤氏の目的はオリンピックを利用して自らの一大リゾート地を完成させようということ。それも自分は1銭も出さず“公費”を利用して、ということです。わかりやすく言うと、長野県下の焼額山や岩菅山がある奥高原周辺にはすでにプリンスホテルがあり、さらに西武が進出を予定している。そして志賀から下ったところには万座温泉があり、東へ行くと苗場があり、ともにプリンスホテルがある。つまり、新潟(苗場)、群馬(万座)、長野(志賀)を結ぶ一大リゾート地が完成されるわけです。が、どうにも長野側の西武施設への道路、鉄道などのアクセスの具合がよくないという事情があるんです。そこで、オリンピックをエサに、新幹線を通し、高速道を通し、ゴンドラをかけ、“税金”でそれらインフラを整備させようということなんです。アクセスさえ完成すれば、西武のリゾート地は忽(たちま)ち一流に生まれかわることになるんですから……」(『週刊新潮』92年11月12日号)



(2)全国各地で自然環境を破壊

 また、西武のあくどい商法や国土破壊などを批判しつづけている本多勝一氏(ジャーナリスト)はこう述べている。

 「この数年、私は国立公園や県立公園内での環境破壊とか、地球上に残された稀有な地域の自然保護問題について取材してきた。いちいち例はあげきれないが、要するに自然破壊や自然公園法冒涜の問題が起きているところを調べると、実に多くの場所で西武系(とくに国土計画株式会社=堤義明社長)がからんでいるのだ。国立や県立の自然公園に指定されているところを、日本ほど好き勝手に伐採したりスキー場開発したりできる野蛮な後進国は地球上にほとんどないほどだが、それに手を貸している国土破壊計画会社の典型が西武系なのである。いったいこの“国土破壊株式会社”は、わが祖国日本をどうしてくれようというのか。一説によると、西武系が買い占めた日本の国土はすでに四国の面積に匹敵するとか。四国といったら広大なものになるが、株式も公開せぬこの秘密会社が何をしているのか、確認は容易なことではない。しかし都会のバカ高い土地と違って、西武が観光開発として狙うような山や過疎地帯は、もうタダみたいな値段だから、この説も資金的には決して不可能ではないだろう。しかも地元民の多くは、単に馬の前にぶらさげられたニンジンの近視眼的無知と目先の利益に導かれ、郷土の真の価値を破壊してゆく開発会社を『誘致』するのである。新植民地主義下の『発展途上国』と、『北』の先進国との関係そっくりに、“現住民”の政府(多くは『先進国』のかいらい政権)がのぞんだからという錦の御旗のもと、堂々と『開発』(侵略・破壊)してゆくのだ」(『貧困なる精神』第19集、すずさわ書店)

 こうした西武の自然環境破壊に対して、全国各地で反対運動が起きている。たとえば1989年、堤義明氏は長野冬季オリンピック招致委員会の名誉会長に就任すると、直ちにオリンピックの滑降コース候補地に西武経営のスキー場である志賀高原の裏岩菅山を予定すると発表した。ねらいは次のとおりである。西武(コクド)は、志賀高原に焼額山と五輪山という2つのスキー場をもち、さらに岩菅連峰を越えると、上越の苗場、三国、中里にもスキー場を保有している。これらのスキー場をロープウェイで結んでネットワーク化し、群馬、新潟、長野の3県にまたがる総延長50キロメートルの「夢のスーパー・スキー・ネットワーク構想」をもっていたが、裏岩菅山に滑降コースを建設するという計画は、この構想の一環だったのである。

 志賀高原に唯一残されている原生林を背にする岩菅山に滑降コースを作るというこの計画にたいして、自然保護団体などが反対運動に立ち上がった。「わずか2週間のオリンピックのために、貴重な自然をぶっ潰していいのか」「会場となるところを利権化し、それを当て込んでリゾート開発をすることは許せない」などという声が高まり、結局、堤義明氏は岩菅山での滑降コース案は断念せざるを得なくなった。

 このほか、たとえば北海道夕張市では「ユウバリコザクラの会」が、八幡町の鳥海山では「鳥海山の自然を守る会」が、群馬県の三国高原では「新治村の自然を守る会」などが、西武が強圧的に進める環境破壊に対して反対運動を起こしている。1990年には、全国規模の「反・国土計画(株)住民運動ネットワーク」も結成されている。



 スポーツジャーナストの谷口源太郎氏は、堤義明氏や渡辺恒雄氏(読売グループのトップ)がプロ野球、スキー、大相撲、Jリーグなどのスポーツに支配力を及ぼしていることをとりあげ、こう記している。


 「堤氏にしろ、渡辺氏にしろ現実的な利害だけからものをみて、スポーツ文化をつくりだしていくといった理念や理想をもっていない。そういうひとがスポーツ界を揺り動かしているところに、日本スポーツ界の貧困さがあるといえるのかもしれない」(前出『創』)

 また、本多勝一氏(前出)も、堤義明氏のこうした姿勢を痛烈に批判し、つぎのように述べている。

 「自らは税金を払わずに、国民の税金を最大限に我田引水してふとりつづけるこの企業は、自民党政府やその役人など言いなり放題だとみているのだろう。(中略)スポーツ大会を自社の施設でやるためには、国際大会誘致に好都合な全日本スキー連盟会長に就任して公私混同・我田引水し、また国際級のスポーツ選手をどんどん社員にしてコネやコマに使う。近くは長野オリンピック誘致合戦での伊藤みどり氏(フィギュアスケート=コクド系のプリンスホテル所属)を見よ。スキーをはじめとするスポーツで国際級選手になるためには、青春の時間のすべてをその一点に賭けてしまった人が多く、他に就職もしにくいので、こうした企業の言いなり放題である。それにつながる文部省も言いなり放題だ」(『貧困なる精神』第J集、朝日新聞社)






カルメンチャキ |MAIL

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