女の世紀を旅する
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| 2004年10月10日(日) |
アメリカ大統領選挙:ケリーは勝利できるか |
《 アメリカ大統領選挙:ケリーは勝てるだろうか 》
2004/10/10
アメリカの大統領が変われば世界の歴史も変わるといっても過言ではない
アフガン戦争・イラク戦争を遂行したブッシュ大統領のアメリカは国際社会の中で孤立をよぎなくされ,その一国主義的な強硬路線に対して,アメリカ国民の中にも「国際協調主義」の方がよいという声も高まっているようだ。
ここにきて,民主党のケリー上院議員に対する重要州での支持率が高まっており,ケリー氏が逆転して大統領になる可能性も出てきたようだ。テレビ討論会でイラク問題の失態を突かれたブッシュ大統領は「テロとの戦いこそがアメリカの使命」と,居直ってみせているものの,全米の視聴者の多くは,泥沼化したイラク占領の行方に不安を抱いており,この討論会を見て,ケリー氏支持に転じた人々も多く,ブッシュ優勢もくつがえされるかもしれない。
ところが,アメリカの大統領選挙には不正がはびこっており,謀略によって共和党が勝つことになると予想している人がいる。Sakai Tanaka氏がその人で,彼は巧妙な選挙操作で共和党のブッシュが勝つのではないかと,実証的な証拠をもとに推測している。注目すべきリポートなので,以下に紹介しておきたい。
●ケリー氏が討論会で優勢.ブッシュ大統領はイラク問題で守勢
米大統領選は11月2日の投票日まで、13日の最後のテレビ討論会を残すだけになった。民主党候補のケリー上院議員は全米支持率だけでなく、勝敗を左右する重要州ごとの支持率でもブッシュ大統領を追い上げている。最大の焦点であるイラク問題の行方も絡み、最後まで予断を許さない情勢になってきた。
「今はまだ伯仲しているが、形勢は着実にこちらに傾いている」。大統領とケリー氏がほぼ互角の結果に終わった8日夜の第2回テレビ討論会(セントルイス.ミズーリ州)。ケリー氏の有力側近の一人が自信ありげに語った。 ケリー氏はブッシュ政権のイラク政策批判をテコに全米支持率を回復させたのに続き、勝敗のカギを握る激戦州でも猛追し始めている。先週の世論調査によると、ケリー氏は敗色が濃かったオハイオで形勢を逆転し、一ポイント差でリード。大統領が「当確」と見られていたコロラドでも互角に戻した。大票田のフロリダでも「差が縮まりつつある」と選挙アナリストはみる。
こうした重要州の動きは全米支持率よりもずっと大きな意味を持つ。米大統領選は各州で一票でも多くを得た候補者が、その州に割り当てられた「選挙人」を総取りし、全選挙人の過半数(270人)を制した候補が当選する仕組みになっているからだ。
ケリー氏は先月末の時点では、選挙人の獲得予想数で大統領に70〜90の差を付けられていた。だが、オハイオなどの激戦州で優位に立ったことで、8日の世論調査ではその差は40前後に縮まっている。「再びきん差の戦いに戻りつつある」。ブッシュ陣営幹部も8日夜、接戦を認めた。
大統領がケリー氏の猛追を許しているのは先週、イラクに大量破壊兵器がなかったと結論づける米調査団の報告書が発表されるなど、イラク戦争の正当性が揺らいでいることが大きい。 ケリー陣営は外交・安保をテーマとした第1回討論会(先月30日)に「圧勝」した際には、重点を内政に移す意向を示していたが、マカリー上級顧問は「これからイラクと経済の両方で同時に攻勢をかけていく」と予告している。=AP
●不正が横行するアメリカ大統領選挙
11月2日のアメリカ大統領選挙(総選挙)まで、選挙戦の残り時間が1カ月を切った。アメリカでは9月末から不在者投票がスタートするとともに、 10月4日には有権者登録が締め切られた(登録をした有権者だけが投票できる)。
今年の選挙は人々の関心が異様に高く、前回2000年の選挙時に比べ、有権者登録の数はかなり多くなっている。選挙当日までに登録作業を終えるため、全米の多くの選挙管理事務所で、土曜日出勤や残業が必要な状態になっている。不在者投票も、投票申請書の申請数が前回選挙よりかなり多いと報じられている。
今年の大統領選挙に対して米国民の関心が高いのは、アメリカが戦争状態という現職の指導者を優位にする事態に置かれている一方で、この戦争状態が続くことが望ましいことなのかどうか疑問が拡大しているからだろう。「今は戦争中なのだからブッシュ大統領についていくべきだ」と考える人と「いや、ブッシュがやっていることはおかしい。辞めさせるべきだ」という主張の人がぶつかり合い、選挙の場で決着をつけようとする事態になっている。
すでアメリカでは、共和党支持者と民主党支持者の間の論争が喧嘩腰になっ てしまうことが多くて議論にならない、という指摘がある。両党の選挙運動家が支持層に対して必ず投票するよう呼びかけ続けた結果、有権者登録や不在者投票が増えている。
とはいうものの、不在者投票が多いことには、もう一つの理由がある。フロリダ州などでは、共和党も民主党も、支持者に対して選挙当日の投票ではなく不在者投票をするように勧めている。当日の投票では、不正が行われる可能性があるからである。
前回2000年の大統領選挙では、フロリダ州などで、紙に穴を開ける「バタフライ方式」などの旧式の投票システムが、誰に投票したのか判読しがたい票をたくさん作ってしまった反省から、タッチスクリーン方式のコンピューターによる投票機を使ったシステムに転換する選挙区が増えている。
だが、この投票機はバタフライ方式よりもっとひどい間違いを起こす可能性があり、選挙不正もやりやすいという指摘があちこちから出ている。電子投票機による投票では多くの場合、紙(投票用紙)に結果を出力することをしないため、コンピューター上で不正が行われた疑いを持たれた場合でも、再開票を行うことができず、不正の「やり得」になってしまう。そのへんの事情を分かっている人々は、旧来の用紙を使った方法で行われている不在者投票の方が安全だと考えている。
●厚紙の申請書しか認めないのは妨害工作?
ディーボルドの本社はオハイオ州にあるが、同社の経営トップ(CEO)であるワルデン・オーデル(Walden O'Dell)は「11月の大統領選挙ではオハイオ州で必ずブッシュを勝たせる」という趣旨のメモ書きを共和党陣営に送っており、そのメモは最近暴露された。これは、ディーボルドが投票機のシステムを不正に操作してブッシュを勝たせるということなのではないかと懸念され、オハイオ州ではディーボルドの投票機を使うのを止めるべきだという議論が起きている。
ディーボルドの投票機に懸念があっても、オハイオ州ではそれを使うことを止めそうもない。オハイオ州政府では共和党の力が強いためだ。オハイオ州では州知事と州選出の連邦上院2議席の両方、それから州議会の上下院の両方の多数派が、いずれも共和党である。
オハイオ州は、共和党支持が特に多いわけではない。近年はオハイオ州の中部が共和党の牙城から民主党の票田へと衣替えしている。それだけ共和党の優勢が危うくなっているわけで、民主党は貧困層が多く住む地域などで投票を呼びかける活動を盛んに行った結果、民主党支持者の多い地域では、前回2000年の大統領選挙時に比べ、有権者登録の数が3・5倍に増えた。これに対して再選を狙う共和党ブッシュ陣営は今年3月以降、オハイオ州を69回も遊説に訪れている。選挙戦のラストスパートが開始された10月の第1週には、ブッシュ大統領自身が1週間に2回、オハイオを訪れた。
共和党陣営は、このような正攻法だけでは足りないと考えたらしく、選挙を取り仕切る州知事が共和党であることを利用して、職権乱用まがいの汚い戦術に出た。ケネス・ブラックウェル知事は有権者登録が進行中の9月上旬「有権者登録は、一定以上の厚紙に印字した申請書によるものしか認めない」という指令を州内各地区の選挙管理委員会に対して発した。
その理由は「申請書を保存しておくのに厚紙の方が良い」というものだったが、実際のところ保存はコンピューター化され、スキャナーで読み取ってCDに焼きつけていたので、申請用紙が厚紙かどうかは重要でなかった。民主党側が貧困層などに配布していた申請書は薄い一般の紙に印字してあり、それらを無効にしようとする作戦だと民主党側は反発した。知事の指令は有権者登録の締め切り数日前の9月末日に撤回されたが、すでに多くの申請が却下され、民主党が支持者に再申請を呼びかけても締め切りに間に合わない状況になっていた。
これまでの米大統領選挙では、オハイオ州を制した人が大統領に当選するケースがほとんどだったが、その一方で同州は接戦になることが多く、前回はブッシュがゴアに3・5%の票差で勝っている。今回はもっとぎりぎりの接戦になるのではないかという予測があり、ブラックウェル知事自身「票差が2%以下になった場合、選挙後に(前回のフロリダのような)大騒動がオハイオで起きるだろう」と予測している。
●ゴアの得票「マイナス1万6千票」
電子式投票機は、すでに全米各地の選挙で何回も使われているが、人口数百人の選挙区で数万票が入ってしまったり、集計時に各選挙区の得票数を加算していくべきところをマイナスしてしまう計算間違いが起きたりという問題が起きている。フロリダ州で2002年に行われた予備選挙では、ある選挙区の投票総数の8%が機械の不具合のために消えてしまったという指摘もある。
2000年の大統領選挙の当日夜、フロリダ州のボルシア郡(Volusia)という投票総数600の選挙区では、ディーボルド製の集計マシンがゴアにマイナス1万6千票、ブッシュにプラス4千票が入ったと表示する計算間違いをおかした。ES&S製の集計マシンを使っていたブレバード郡(Brevard)でも、ゴアがマイナス4千票になる計算間違いがあった。いずれのシステムも投票結果がマイナスになる計算間違いに対するエラー防止機能がついておらず、選挙管理委員会もマイナス状態にしばらく気づかなかった。
前回の大統領選挙でフロリダ州は約300票という異例の僅差でブッシュが勝ち、これがブッシュを大統領に就任させたが、フロリダではこれだけ大々的な計算間違いが複数あったのだから、数百票単位の小規模な計算間違いが他の選挙区であり、それは最後まで修正されなかったのではないか、投票機メーカーがエラーを誘発したのではないか、という疑念が出ている。
電子式投票機を使う場合でも、投票時に投票機の横から投票結果を印字した紙を出力し、それを別途投票箱に入れておけば、不正の疑惑があったとき、投票箱の中の票数を数えて計算することで、正しい選挙結果を把握し直すことができる。だがフロリダ州を含む全米の多くの場所では、紙による出力を行っておらず、投票機で不正が行われたとしても、それを追及する方法がない。投票機メーカーは「紙による出力は煩雑なだけで意味がない」と主張し、共和党系の各州政府も、紙の出力に消極的である。一方、民主党が比較的強いカリフォルニア州では、投票機を使う場合は必ず紙の出力を伴わなければならないと定めた新法を成立させている(ただし実施は2006年から)。
アメリカでは2000年の大統領選挙後、欠陥システムとして批判された旧式の「バタフライ方式」から脱し、電子式の投票機を全米で導入するための立法措置(Help America Vote Act)が行われて政府予算が組まれ、電子化が促進された。ところが実は、電子式には不正疑惑の問題があることが分かり、今では多くの選挙区が「旧式を使い続ける方がましだ」と考え、電子化を見合わせている。前回選挙時にフロリダの集計問題をすべてバタフライ方式のせいにしたのは、電子式を普及させ、自党に有利な選挙結果を出そうとする共和党の謀略ではないかと疑う人も増えている。
●黒人の投票を妨害する
電子投票機と並び、今回の選挙で問題になっているもう一つの不正として、 共和党系の人々が黒人有権者の投票を妨害しようとする動きがある。黒人の、 特に貧困層は民主党支持が大半である。
テキサス州にある、黒人学生が大半であるプレーリービューA&M大学では、共和党系の地元検事が学生に対し、大学のある町ではなく実家の近くで投票するように要求し、それを守らなければ逮捕すると脅していたことが分かった。地元の選挙区でまとまった黒人票が民主党を有利にすることを避けようとしたのだろう。市民の8割以上が黒人であるミシガン州デトロイト市では、共和党の州議会議員が「デトロイトでの選挙を妨害しないと大変なことになる」と発言したことが暴露され、問題になった。
これらのことはニューヨークタイムスで黒人コラムニストのボブ・ハーバートが怒りの筆致で紹介している。黒人の人権保護団体などは、投票日に黒人有権者に対する妨害行為がないかどうか監視する動きを強めている。投票日に妨害が行われ、選挙後に問題になる可能性がある。
フロリダ州では、2000年の選挙時に、ジェブ・ブッシュ知事(ブッシュ 大統領の弟)の側近が、選挙権を剥奪される元犯罪者(刑務所帰り)のリストに、犯罪者ではない主に黒人の人々の名前を6万人分加え、当日投票所に行っても刑務所帰りとして扱われて投票を拒否される仕掛けを作ったことが知られている。この件は、前回選挙後に問題になったが、ジェブ・ブッシュ知事はまだ懲りず、今回の選挙でも熱心に黒人の投票権剥奪を行っている。
その方法の一つは前回同様、刑務所帰りのリストを使うことで、地元の新聞が情報公開の請求をして最近ようやく元犯罪者のリストを公開させ、そこにはいまだに無実の黒人の名前が多く混じっている疑いが濃いことが判明した。興味深いのは、4万7千人のリストの中で2万2千人以上の黒人がリストに載っていたのに対し、ヒスパニック系でリストに載っていたのはわずか61人だけだったことである(リストには人種欄がついている)。
フロリダではヒスパニック系が共和党支持(反カストロ)なので、共和党系のフロリダの州務長官は、リストの中からヒスパニック系を外し、代わりに無実の黒人を入れた可能性が大きい。このリストは公開された後、問題を指摘され、選挙時には使われないことになったが、代わりにどんなリストを使うか、フロリダ州政府は明らかにしていない。
もう一つの方法は、黒人住民が多いフロリダ中部のオーランド市で昨年3月に行われた市長選挙で不正があったという容疑を使い、地元の黒人の自宅を一軒ずつ州警察が事情聴取し、もう投票に行かない方がいいと威圧するやり方である。州当局は、不正疑惑が無実だったと5月に発表したが、なぜか州警察はその後も地元の黒人の人々の自宅を事情聴取の名目で訪問し続けた。
オーランド周辺の選挙区では、前回の大統領選挙で、民主党支持者が黒人有権者たちに呼びかけた結果投票率が上がり、ゴア候補が勝った経緯がある。さらに昨年3月のオーランド市長選挙では民主党の候補が勝った。この新事態が共和党を恐れさせ、今回の選挙では黒人を投票に行かせたらまずいということで、共和党の州政府が威圧作戦を展開しているのだろう。アメリカ南部の黒人たちは1960年代まで、投票に行こうとするたびに妨害を受けたものだが、そんな昔の抑圧がまた戻ってきている。
●コロラド州の制度改正で勝者が変わるかも
11月2日の大統領選挙は、4年前の前回に劣らない大騒動になりそうだ。 不正の話だけでなく、コロラド州が選挙制度を変えようとしていることも、大混乱を巻き起こす可能性がある。
アメリカ大統領選挙の制度は間接選挙で、各州で勝った方の党が、その州の人口に応じた人数の「選挙人」を出し、各州の選挙人が12月初旬にワシントンに集合して投票し、次期大統領を決める制度になっている。コロラド州は選挙人の定数が9人で、従来の制度だと、ブッシュ52%、ケリー48%の得票率で共和党が勝った場合でも、勝った方が全部とる仕組みになっているため、9人の選挙人は全員が共和党から出る。
コロラド州では、州憲法を改定して「勝者総獲得制」を「比例制」に変え、 52:48だった場合、共和党が5人、民主党が4人の選挙人を出す制度に変えようとしている。制度改定を問う住民投票は、大統領選挙と同時に行われ、可決されればすぐに改定が発効することになっている。
今回の選挙は4年前に劣らず大接戦になりそうなので、コロラド州が制度を変えた場合、僅差でブッシュが勝つ状態から、僅差でケリーが勝つ状態に変わってしまいかねない。しかも問題をややこしくしているのは、コロラド州が制度を変えるかどうかは、大統領選挙の投票結果が出るのと同じ日だということである。
コロラド州の世論調査では、改定賛成が51%なので改定が実現しそうな気配だが、その場合共和党側が猛反発し、改定は違法であると主張して争いを裁判所に持ち込み、最高裁で決着がつくまで騒動が続く可能性がある。
前回の大統領選挙でも、フロリダ州の選挙結果について最後は最高裁が判断し、最高裁の判事に共和党系が多いことがブッシュ勝利につながった。今回も、裁判のテーマは違うが展開は似たようなものになるかもしれない。いずれにしても、すっきりした選挙にはならないだろう。
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