女の世紀を旅する
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2002年10月01日(火) |
ついに米国株7500ドル割れ,日本が金融危機を克服するシナリオ |
《世界同時株安,世界金融危機の到来の秋相場、日本は再生できるのか》
2002.10.1
昨9月30日,小泉首相は内閣を改造し,銀行への公的資金投入に反対してきた柳沢金融担当相を更迭し,竹中平蔵・経済財政担当相に金融担当相を兼任させた。首相は「あらゆる手立てで不良債権処理を進め,金融機関の健全性を取り戻す処置をしてほしい」と述べ,今後の不良債権処理は,従来の銀行の体力の範囲で処理を進める漸進的な政策から,公的資金の投入も視野に厳格な資産査定で銀行の健全性を見直す強硬策へ転換した。
ニュヨークダウの下落は世界同時株安を引き起こしているが,まだまだ下落は続くだろう。やがて6000ドル台に下落すると思われる。しかし,すでに18年前の株価水準に戻っている日本は,今開始した米国株の暴落の余波を受けるだろうが底値は浅いのでないか,すでに日本の株価は大底圏にあることに留意したい。
※ドイツ証券チーフストラテジストの武者陵司(むしゃりょうじ)氏は今秋の日本マーケットを次のように予想している。
●当局が不良債権処理を進めれば,日本の底値は浅く,日経平均8000円で世紀の底入れか
10月1日,ニューヨークダウ一時7500ドル割れ,しかし底入れは見えない.世界市場に暗雲が垂れ込めている.この秋,不良債権などの金融問題を日本は乗り切れるのか。日本経済は正念場にさしかかっている。
イギリスFT、ドイツDAX、フランスCAC、米国NASDAQのいずれも、バブル形成前の1996〜97年の安値を更新した。世界金融危機が勃発しつつあることが明らかとなっている。
夏枯れ相場が終わり、世界恐慌の懸念を織り込む秋相場が始まっている。世界的に実物経済の好転が期待できない以上、事態を転換させる力は政策変化しかない。しかし、世界の経済・金融当局は、日銀を除き現状直視拒否のスタンスであり、当面政策の新機軸は期待できそうもない。底入れはさらなるディザスター(災い)の後(当局の姿勢変化があってから)であろう。
年末にかけ世界株式の急落場面が続こう。米国主導の世界株式は今年11月から来年1月にかけて、世界的緊急事態宣言、政策提起により、一番底を付けてリバウンドする(大底ではない)だろう。その転機は、(1)ドル防衛協力、(2)グローバル・ケインズ政策、(3)金融緩和――が柱となろう。
同時期に日本株は、日経平均8000円台で大底を付ける可能性がある。
その理由は、 (1)日本株のバリュエーションが、国際比較でも歴史的にも非常に魅力的となっていること(益回りは社債利回りを30年ぶりで上回り始めている。またPBRは1.4倍と米国の半分の水準である)、 (2)日本はデフレに慣れ、政策当局、企業、消費者、ともに低速警戒運転モードに入っており、ネガティブサプライズがほとんどないこと、 (3)ユニットレーバーコスト(賃金/労働生産性)の低下、労働分配率の頭打ちなど、徐々に企業収益底入れの条件が整ってきたこと――などである。
日本株のパニック的下落を回避し大底入れを確かなものにするには、毅然とした政策が必要である。それは平時に求められる一般的構造改革ではない。
(1)コンフィデンスクライシス(信任危機)回避のための預金保護、銀行株主保護を柱とする金融安定化策(ペイオフ延期、銀行への資本援助など金融不良債権問題の最終処理)、 (2)需要政策(減税、公共事業など大規模な財政出動)、 (3)株式への資金流入策(証券税制改正の棚上げと、より強力な優遇措置)が求められる。
金融不良債権処理は、その核となる。この点で、日銀新政策は最大限の英断と評価できる。小泉純一郎首相が日銀の敷いた路線(銀行改革最終決着)に毅然と乗れば、すべての先進国当局が behind the curve (後手に回っている)なかで、日本の先進性が際立つ。日本株が底入れし、世界のベストパフォーマーとなる可能性も出てくるだろう。
日銀の、中央銀行としては前代未聞の主要行保有株式取得の決断は、「金融政策」というより「金融システム対策」である。この対策の狙いは、(1)銀行の株式保有=資本減少のリスクの肩代わり、(2)それを通した間接的株価支持、である。金融政策といえないのは、(1)株式取得が市場からの購入ではなく相対であること、(2)ベースマネーの供給増加をうたっていないこと、から明らかである。それは日銀の役割というより、金融庁や財務省の責任領域に属することである。しかし、金融庁、財務省、首相が動かないなら(銀行等保有株式買取機構、整理回収機構が機能しないなら)、日銀は多少の領域侵犯を犯してでも、自らイニシアティブを採るという姿勢である。
もし失敗すれば円の信任、日銀の存続にすら関わる、劇薬的政策である。日銀当局は、悲壮な決意をもって不退転の意思決定をしたものと思われる。これを、従来のPKO(株価維持策)と同列に評価するべきではない。従来のPKOは、払うべきコスト、犠牲、痛みを回避する甘い便法であった。今回は日銀の信認・存続・正当性という最も重いコストをかけた対応で、失敗は赦(ゆる)されない。
この決断が一連の金融不良債権処理、公的資金投入、部分的・一時国有化など、抜本的対策の突破口となる可能性が高い。そうでなければ、日銀ははしごを外されることになる。小泉政権にとって、そのような事態は許されないし、小泉首相は十分にそのことを認識し、抜本的対策を取る姿勢にある。例えば、ブッシュ米大統領に金融不良債権問題の解決を約束したこと、柳沢伯夫・金融担当相にペイオフの延期を求めたこと(つまり、金融庁の主張している金融安定化は実現していないとの認識を示した)などから、それはうかがわれる(昨日,柳沢金融担当相は更迭)。仮に小泉首相が従来の金融庁路線を踏襲・サポートし、問題隠蔽と先送りを続けるなら、日銀の非常時政策で既にシステム破綻の危険を感じ始めている市場は、さらに大きく下落するだろう。
よって、小泉首相の自発性にせよ、市場のさらなる下落に後押しされるにせよ、今後数カ月以内に金融不良債権問題の最終決着策が打ち出される可能性は強い。同時に需要政策、株式投資奨励策(証券税制の改正が柱)が出されれば、展望は明るさを増す。株価は世界株安の影響を受けて再下落するだろうが、底値は浅い。日経平均8000円台で、世紀の底入れをする可能性が高いと判断される。(武者陵司)
★しかし,武者陵司氏のコメントはそうであってほしいという希望的観測にすぎない。アメリカのバブル崩壊は今も進行中であり,大底はまだまだ先のことであり,日本と同じようにデフレ経済におちいるだろう。ニュウヨークダウがいずれ5000ドル台まで下落したなら,日経平均の7000円台も覚悟しておく必要がありそうだ。最悪の事態を予測しておくことが肝心だ。なにしろ今の日本経済はアメリカ経済の景気回復に一縷の望みを託しており,そのアメリカ経済がコケてしまったたら,日本経済再生のシナリオも破綻してしまうのは明らかなのだから。2002年秋はイラク攻撃と米国株の下落という不安要因を国際社会はかかえ,すぐそこにある危機に呻吟している。
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