女の世紀を旅する
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2002年05月18日(土) 瀋陽事件に関する雑感

瀋陽事件に関する雑感 
                    2002年5月18日






●日本国民を激怒させた瀋陽事件

 地べたに倒れ込んだ女性たちがが警官たちに引きずり出されまいと門扉の鉄柵にしがみつき、そばで幼女が呆然と立ちすくんでいる姿はテレビで全世界に放映された。ところが、領事官員とみられる男たちは傍観するだけで、警官の帽子を拾って渡し、助けようともしない。亡命者がすぐそこに助けを求めているのにである。

 考えてもみてほしい。悲惨な北朝鮮(300万人が餓死)からの難民は命をかけて鴨緑江・豆満江を渡り,瀋陽の日本領事館に亡命をはかったのにである。その日本の副領事館員らが武装警官が領事館の敷地に入ってきて3人の女性を連行するのを止めず,傍観ないしは黙認しているのだから,日本中が怒りの渦に巻き込まれた。



●瀋陽は,ヌルハチが清朝(後金)を建国した地

 遼寧省の瀋陽は,旧満州国の時代に奉天と呼ばれていた。清朝の初代ヌルハチと第2代ホンタイジは瀋陽を首都として清朝を建国.1643年に順治帝が北京遷都するまで清朝の首都であったところ.1905年に日露戦争の最大の決戦となった奉天会戦で日本軍は60万のロシア軍を破った)

 中国・瀋陽の日本総領事館内に駆け込んだ北朝鮮の亡命希望者たちが、中国の武装警察官に強引に拘束された瀋陽総領事館事件はテレビ映像を通じて日本にも大きな衝撃を与えた。いつまでも平和ボケ外交をやっているツケがまわってきたのだ。現在,北朝鮮で起こっている悲劇を知っている人々は,難民を助けなかった人権意識をもたない日本の外交官に怒りを覚えるのも無理からぬことだ。


 今回の事件で明らかになったのは、絶対に非を認めたり、謝ったりしない「強弁の国」という中国の国柄である。しかし,それは当たり前のことで,共産党独裁体制の中国が同じ共産主義国家の北朝鮮からの不法入国者を逮捕して北朝鮮に強制送還しなくては,面子が立たない。中国が一番北朝鮮の朝鮮労働党政権をサポートしているのだから,強制送還するの当然である。外国大使館への亡命に失敗した人々は本国に送還されれば,死刑が待っている。国家侮辱罪は極刑として処分される。それを覚悟で領事館に亡命をはかるのである。失敗すれば死刑をまぬがれることは出来ない。

 日本は今回の事件で日中友好を損なうとか言って甘い態度に出ない方がよい。こういう強権国家に対しては強く謝罪を要求し続けなくてはならない。日本が治外法権を侵犯されたことをあいまいなままにするとと,例の日本人拉致事件で示した弱腰外交と同様に,国家としてなめられ続けることになる。

 もちろん中国としては,今回の世界に流された映像で,世界中の国々から「やっぱりこの国には人権というものが保障されていないんだなあ」と軽蔑され,国家的威信も失墜の憂き目にあっているから早くこの事件を処理したいだろう。しかし,謝罪もしないで,日本政府に身柄を引き渡すこともなく第三国ルートを通じて今回の亡命難民を送還したら国家主権を侵害された日本の立つ瀬はない。日本国民は今回の事件に心底怒っているゆえ,小泉内閣としても大きな試練に立たせられるだろう。
 
 中国側が自己の非を認めないのは、米国と対峙する一方の超大国としてのプライド、党指導部と軍部との関係や,国内のナショナリズムに配慮していることも大きい。



●明らかなウィーン条約違反

 瀋陽事件でも、中国側は当初「総領事館と館員の安全を守るため」と弁明していた。ウィーン条約は「領事機関の不可侵」を定めているが、中国側は「同条約には領事館の安全を領事館が置かれた国が保障する義務がある」ことを明記しているとして、武装警官のとった措置は「純粋な責任感によるもので、条約の規定にもかなっている」と主張した。


 しかし、2歳の幼女を背負った女性を含む亡命者たちが領事館に危害を加えようとしているとの主張はお笑いぐさである。中国側は今度は自国の調査結果に基づくとして「武装警官は総領事官側の同意を得ており、謝意も受けている」と発表した。だが、外務省調査団は総領事館側から聞き取り調査を行い、「同意を与えた事実はなく、館員が(亡命を求めた)男女五人を移動させないよう求めたが、警官たちは聞き入れなかった」と発表した。

 事実関係で日中の言い分は全く食い違っている。日本の阿南大使もいいかげんである。外務省の親中国派かどうかは知らないが,北朝鮮からの難民を追い払うように指示していたとしたら,日本人の人権意識の薄っぺらさを世界に公表しているようなものだ。自民党の橋本派は親中国派が多いと聞くが,北朝鮮との友好に努めてきた野中元幹事長らの頑強な主張もあって,今回の瀋陽事件の責任問題もあやふやに処理され,中国に対する謝罪要求も取り消してしまう可能性が高いといわざるをえない。こうした政治家たちは長年,中国のご機嫌うかがいばっかりしてきているから,日本が北朝鮮の悲惨な亡命者を受け入れることに困惑しているはずである。日本はヴェトナムの難民(ボートピープール)をたった500人しか受け入れなかった国だ。今だって,外国人の日本への政治亡命を歓迎しない風潮がある排他的な国なのだ。思い切って,北朝鮮の難民を数万人受け入れる用意があると政府が声明を出してみたらどうだろうか,それくらいの器量をみせてもらいたいものである。




●中国が謝罪を要求して日本から援助金をせしめてきた経緯

 思い起こしていただきたい。戦後57年間,これまでの日本の対中姿勢は,靖国神社・歴史教科書を含めて“謝罪外交”を続けてきた。日本は償いとして30年間にわたり0DA(政府開発援助)で3兆円以上の援助をしてきたが,一度でも中国側から感謝されたことがあっただろうか。そうした日本からの莫大な援助を受けてきた経緯さえ中国国民は知らされていない。謝罪を要求すれば日本政府は金を出す,その繰り返しで戦後どれだけ我々は屈辱をなめてきたことか。

 中国の対日姿勢がいつも高圧的であったのはそうした援助を引き出すためであった。アメリカ外交委員会の報告では日本からの支援金で中国はミサイルなどの軍事増強をはかってきたという。我々の税金が中国の軍備増強のお手伝いをしていたということか。とうとう日本も堪忍袋の緒が切れたということである。

 日本人に屈辱感を与えた責任は大きいといわざるをえない。外務省と阿南大使は毅然とした対応を貫かなければ、今度という今度は日本の国民感情は外務省を許さないだろう。

 


カルメンチャキ |MAIL

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