女の世紀を旅する
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2002年02月02日(土) |
2月 アナリストたちの予測 円安は140円方向へ |
いよいよ2002年の2月相場が始まった.
予測どおり,東証は下落を続け,9300円割れから一段の下げが生じよう. 円安〈現在134円台〉も予測どおり,135円から140円へ一段と円安が進むことが予想される.この2月から3月にかけての株式・債権・為替相場は,大きな波乱が予想されるので目配りが欠かせない.
以下に,各証券会社の主席アナリストたちの最近の予測を掲載しておく.
●円相場/130〜140円程度の水準は、アジア諸国に悪影響はない
クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券会社、グローバル為替調査部 ストラテジストの小笠原悟さんは、「現在の円安は抑制気味の財政政策と 超金融緩和政策といった ポリシー・ミックスを反映したものであり、ファン ダメンタルズにそった動きであ ると判断される」と、語る。
<中期的には、150円超の急激な円安は想定していない> ただ同社では、中期的なスパンで、150円あるいは160円を超えるよ うな 急激な円安を想定しているわけではない。「現状では円安がこのまま 一本調子で進むとは想定しがたい」と言う。日本人投資家のリスク許容度 は極端に 低下しており、たとえ海外投資家が日本売りを仕掛けたとして も、国内からの 資金フローが滞っている。そこで、「当面は年度末にかけ て、日本勢の一部 のリパトリエーション(資金の国内環流)が大幅な円安 進行を抑制する場面も ある」と、予想している。
<円安を促す本格的な資金フローが起きる条件は?> 円安を促す本格的な資金フローが起きるには国内景気が回復し、投資 家 のリスク許容度が改善に向かう必要がある。ただこの場合、景気が良 くなれ ば輸入は増加し、海外からの対内投資も活発化する。また、仮に 日本が景 気回復への道筋をつけることに成功すれば、日銀が緩和政策 を転換すると の思惑から、円ショート(売り)の蓄積には神経質にならざる を得ない。
<円安で日本の国内需要が改善すれば、アジアにも恩恵> こうして、「円安傾向が単純に持続するわけではないし、日本の国内需 要や 対外投資意欲の改善に至れば、アジア諸国もそのメリットを受ける ことにな る」。一部のアジア諸国から円安牽制発言が相次いでいるが、 同社では、 「現在想定している130〜140程度のドル/円の水準は、 アジア諸国に対して特に悪影響を与えるものではない」と、判断している。
●為替政策/円安に「待った」をかける外国人の債券売り
UFJキャピタルマ−ケッツ証券・投資調査部長の斎藤満さんは「長期 金利の上昇が日本の円安誘導に『待った』をかけることになった」と語る。 デフレ回避のために採られたはずの円安策が、一般物価の下落に歯止 めをかける前に、株や債券という資産デフレを助長する形になってきた からだ。斎藤さんはすでに、円安が往々にして株価を押し下げてしまうこ とを指摘しているが、「最近になって日本の債券相場の悪化(長期金利 上昇)も、円安と関わっている、との認識が財務省のなかにも出てきたよ うだ」として、当局の為替に対する物言いも変わってきた、と言う。
<限界的には外国人の債券相場への影響が増大> 今月になって「外国人」による円債投資が大きく売り越しとなった場面 があった。その主たる要因は欧州中銀が日本国債を売ってきたためと される。債券市場においても外国人投資家が、円安による投資パフォー マンスの悪化から、円資産を売る動きが指摘されるようになったとして、 次のようにコメントする。「外国人投資家による円資産保有はさほど大き くないとは言え、株の売買における『外国人』の割合が半分を占めるよう になったように、限界的には相場におよぼす影響が大きくなりつつある」。 ドルを中心に、外貨で投資評価される外国人投資家にしてみれば、継 続的に円安が進み、それだけドルなどでの投資成果が目減りする時期 に円資産を持っていることは得策ではない、ということになる。
<「一般物価の下落」より「資産価格の下落」がはるかに重要> ところで、今の日本経済で消費者物価などに見られる「一般物価の下 落」よりも、土地・株といった「資産価格の下落」の方がはるかに重要な 問題であり、これがバランスシートの悪化を通じて、需要不足をもたらし ているとともに、「不良債権問題の元凶もここにある」と言う。円安誘導が 資産デフレを助長し、その資産デフレが景気を冷やし、ひいては一般物 価の下落を誘発しかねない状況になってきたことを受けて、「金融の量 的緩和を進める正当性が問われることになる」と言う。
●金利動向/先進国金利は、「下げ」から「かなり違ったピクチャー」へ
住信基礎研究所・主席研究員の伊藤洋一さんは、2001年における 先進国全体の金利動向は「下げ」から、「今年はかなり違ったピクチャー になろう」として、長期金利が上昇する懸念があるとの見通しを示した。
<米国金利の上昇は、やや大幅になる可能性> まず米国は今月下旬のFOMC(公開市場委員会)を皮切りに、次の トレンドに入る前に短期金利は横ばいに入るとした上で、こう語る。「長 期金利はどちらにも振れる展開となるが、基調は強含みだ。すでにそ の兆候は始まっている」。景況の改善を受けて長期金利は上昇するは ずであり、この上げは「今までの下げすぎの回復分を含めてやや大幅 なものになるかも知れない」と言う。欧州についても、ユーロ導入に伴う インフレと景気改善の可能性があり、「政策金利はしばらく据え置かれ る可能性が高い」と見ている。
<日本は2%前後という水準への相場下落も> 日本については、長期金利は「トラップ状態」にあると見ることができ ると言う。つまり、「景気が悪化すれば国債増発から需給関係の悪化 が連想され、一方で景気が改善すれば直ちに金利上昇の恐れが出る、 という『どちらにしても』状況の出現である」。こうした状況から、すでに 上げ基調が始まっていると見る。最近、話題に上ることが増えている 国債暴落については、暴落=2%前後という水準を想定しているとす れば、「その可能性は十分あると見た方が良い」と言う。
<世界経済を巡る環境は去年とは大きく違ってくる> 伊藤さんは、今の世界経済が抱える問題は、当面の回復よりも「そ の後」だと言う。「24日のグリーンスパン米FRB議長の議会証言を読 むと、当面のアメリカ経済に対する楽観論と、その先の経済へのかな りの不安感が見え隠れしているが、それは自動車販売時の金利ゼロ 適用による販売増など、将来の景気回復の原動力をすでに使ってし まっている可能性があるからだ」。これに世界的な金利上昇が重なり、 「今年の世界経済を巡る環境は去年とは大きく違ってくる可能性が高 い」と予想する。世界経済は全体として一旦持ち上がったあと、今年 末になっても「弱い成長力」に悩んでいる危険性が強いと言う。
●経済政策/「量的緩和=国債偏重」はしばらく続く
<オニール発言は、日本政府に対する一種の助け舟> UBSウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道 さんは、為替市場では、米国のオニール財務長官の発言が大きな材料に なり、 円・ドルが一時的に135円台に乗せたことに関連して、同長官の発言 は、「米製造業者の強いド ルへの不満に同意しないというもの」として、次 のように語る。「こうした発言は、米国の経済指標 が最近、改善している ことを背景に、米国政府としてのドル高許容度が幾分上昇していることを 示唆するものでしょう」。
日本政府とすれば、米国経済のファンダメンタルズが改善することによってもたらされるドル高はウェルカム。「日本は構造改革を先送りし、円安政策によって解決を図ろうとしている」との批判をかわしやすくなるからだ。その意味では、「オニール長官の発言は日本政府に対 する一種の助け舟になったといえる」と語る。
<来週末(2月9日)のG7で、140円程度の円安容認メッセージ> 白川さんは「来週末に予定されているG7会合では、140円程度の円安は 容認、といったメッセ ージが出てくる可能性があります」と予想する。1−3 月期の金融政策については、「とにかく 量での緩和」といった日銀、財務省 チームの基本スタンスに、大きな変更を迫る ような展開とはならない。「量 での緩和=国債偏重といった、日銀のスタ ンスは当面続くでしょう」。債券 相場の下落リスクはありるが、日銀、財務省は 、「緩やかな円安容認、の 方を取るもの」とみている。米国経済に対する見方が徐々に改善している なかで、大幅なトリプル安といった懸念が出てこない限り、政府 ・日銀は、 量的緩和モードをさらに進めてくるものとみていいと言う。
<次回の日銀会合は、国債買い切りオペの更なる増額を視野> 次回の日銀・金融決定会合(7、8日)では、「国債買い切りオペの更なる 増額を視野に入れたい」と言う。 ただ、インフレ・ターゲットの導入といった 期待にショックを与える政策オプシ ョンは、まだ打ち出せる状況にはないと みている。
●失業率/デフレによる実質賃金上昇も、失業率上昇の要因だ
BNPパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎 さんは、現在の失業増加の最大の原因は、2000年末以降の内外のIT ブーム終焉であるとしながらも、「デフレ によって実質賃金が上昇して いることが、大幅な雇用の数量調整を引き起こしている側 面もある」と 語る。景気は在庫調整の進展によって、循環的には4-6月に底入れし、 7-9月から景気は持ち直すとみており、想定される景気回復のペース は極めて緩慢である。このため、当面、雇用の悪化は避けられず、 「失業率が6%台に乗せるのは、時間の問題だと思われる」と見ている。
<製造業の就業者は1年間で87万人も減少> 2001年12月の失業率は5.6%(5.55%)と前月(5.45%)から0.1%ポイント 上昇し、過去最悪を更新した。雇用者数、就業者数は、それぞれ3万人、 22万人減少して、失業者数は前月比6万人増加した。有効求人倍率は 0.51倍と前月から0.02ポイント悪化した。なかでも製造業は、著しく悪化 しており、同部門の就業者は1月から12月の間で87万人も減少 した。 これは、「アジア通貨危機、金融恐慌下にあった97-98年を上回る減少 であり(97年33万人減、98年33万人減)、工場閉鎖などによる地方経済 の深刻さを物語っている」と言う。
<企業収益低迷→実質賃金上昇→雇用維持一層困難、の悪循環>
企業収益の低迷から、2001年7-9月時点の労働分配率は製造業が 86.9%、非製造業は 84.5%まで上昇した。本来であれば、生産性の低 迷に合わせて実質賃金が切り下 げられるべきだが、デフレと名目賃金 の下方硬直性によって、実質賃金はさらに上昇し 、企業収益が圧迫さ れているのである。そして「これが雇用の維持を一層困 難にしている」 と言う。企業は雇用コスト削減のために、正規雇用を削減し、コストの 安い非正 規雇用に置き換える動きを続けており、2001年平均の非農 林業雇用者に占める常用雇用 の割合は86.8%と7年連続で低下した。
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