女の世紀を旅する
DiaryINDEXpastwill


2002年01月29日(火) 歴史検証 〈歴史を知らない日本の子供たち〉

歴史検証「歴史を知らない日本の子供たち」
                                 2002,1.29






日本の子供たちの歴史認識不足は,いちがいに学校教育のせいとばかりとはいえない。とりもなおさず大人社会の歴史認識の欠落の縮図だからだ。

たとえば満州事変,上海事変,日中戦争,太平洋戦争,朝鮮戦争,ヴェトナム戦争,中東戦争などの現代史の知識にしたって,ほとんど人が教科書程度の知識も有していない。愛国心イコール軍国主義として,戦争を具体的に子供たちに教えることを避けてきた学校の歴史教師は怠慢である。戦争を知らずして平和を語ることは出来ない。

なぜこうも日本人が自国の歴史に無関心となってしまったのか,世間の風潮が享楽志向が強い日本では,新しい奇異な流行にだけ目が奪われ,過去のものを古くさいものとし,伝統的なものに対する畏敬の念をバカにしてきたではないか。なぜ日本の社会はこうも軽薄になってしまったのか,学生たちの歴史への関心の薄さに,実はこうしたマスコミの無節操さと喧噪がかかわっている。

数年前,スピルバーク監督の戦争映画「プライベート・ライアン」を観たが,米国の101空挺師団の悲壮な戦いがリアルに描かれていて,感心した。
この映画の舞台となったノルマンディー上陸作戦の激戦で死んだアメリカ兵の数よりも,実はもっと多くの死者が出た太平洋戦争の激戦地があるのだ。学生たちにその激戦地はどこか質問してみるといい。ほとんどの学生は答えられないはずだ。太平洋戦争や日中戦争の軌跡を学校でほとんど教わっていなから無理もないが,大人にしたってその知識の稀薄さは同様なのだ。

答えは,硫黄島の戦いで,米兵は2万数千人の死傷者を出しており,ノルマンディー上陸作戦での死者を大きく上回っている。硫黄島は東京都に属する小島であるが,こんなちっぽけの島の攻防戦で日米両軍がおびただしい血を流したことを知っている人は余り多くない。あまりにも犠牲者が多かったため,アメリカ人にとって真珠湾奇襲と同じくらい忘れられない戦場となった。

同じスピルバーク監督の名画「太陽の帝国」は,大日本帝国をタイトルにした映画だが
,この映画は1932年の上海事変から日中戦争時代に日本軍の収容所生活を体験した少年の戦争体験をていねいに描いている。ニューギニア戦線を描いた映画「シンレッド・ライン」や,昨年上映された「パールハーバ」,そして独ソ戦を描いた「スターリングラード」など,ついこの前の戦争を追憶した映画は多数制作されているが,いかんせん
日本の学生たちはこれらの映画が対象とした戦争の知識が無いから,映画が何の戦争を描いているのかさえ見当がつかない人が多い。

日本における歴史教育の,とりわけ現代史を丁寧に教えてこなかったことは日本の学校教育の失策だと断定していい。まずもって学校の先生たちが抽象的な教科書風の無味乾燥な歴史ではなく,生々しい感動するような血肉のドラマに満ちた歴史を教えなくちゃ,歴史嫌いの学生がふえるだけだ。

たとえば,なかにし礼の自伝小説『赤い月』が描いている満州国の日本人難民の惨劇について語ってあげることの方が,子供たちの歴史への好奇心をはぐくむことになる。王朝や君主や官制の詰め込みに終始せざるをえないから,ちっとも歴史のワクワクする楽しさが甘受できない。



●日本の中学生は,中国や韓国の中学生に比べて「歴史への関心」が低いことが、筑波大の遠藤誉教授らのグループの調査で判明した。その調査では,さらに今熱中しているものや、将来への希望が「ない」という日本の子ども目立って多かった。
中学3年生を対象にして、日本で約1000人、中国、韓国で各約500人から、歴史認識と生活意識を調べた結果である。


●中国、韓国での戦争行為に対する日本の態度をどう思うかという質問に、「反省し続け謝罪すべきだ」とした生徒は、中国で34%、韓国で65%だったが、日本では14%。
日本では「これからの関係を考えるべきだ」(28%)、「興味がない」(9%)が目立った。

(この質問は愚問だ。いつまでも謝罪を続けろ風の質問は,日本人の学生にしてみれば,もういいかげんにしてくれよ,と思うのは当然ではないか。こういう自虐的な質問を日本の学生に問い続ける姿勢自体に問題がある。いつまでも戦争責任ではあるまい。周辺諸国に対するナチスの戦争行為に対するドイツの態度をどう思うか,と質問されて「反省し続けて謝罪すべきだ」と答えるドイツの学生はいない。ドイツの学生はこう答えるだろう。あれはナチスがやった行為で,ドイツ国民のやった犯罪ではない,ナチスとドイツ国民を区別すべきだ,ゆえに謝罪し続けるかという質問自体がナンセンスだと論理的に一蹴するだろう。この論理による押しの強さが日本人には欠けているから,いつまでも「ごめんなさい」を繰り返す羽目におちいっているともいえる。もっとドイツ人の論理的に筋を通した態度に学ぶべきだ。 )


●自国の現代史について「誇れることも恥ずべきことももっと知りたい」という生徒は、日本では57%だが、中国は92%、韓国は86%。
日本では「そんなに知りたいと思わない」が34%で、中国(2%)、韓国(4%)との差が
出た。


●一方、自分の国に誇りを持っているという生徒は、中国で92%、韓国で71%に達したが,日本は24%にとどまった。また、自分の将来について中国で91%、韓国で46%が「大きな希望がある」と答えたが、日本では29%にとどまり、「どうなるか分からない」が29%、「全くない」が5%と多かった。


●今熱中していることを尋ねた質問では、日本の生徒は「スポーツ」(19%)、「音楽」
(15%)に次いで「特にない」が14%と多く目立った。


※日本の子供たちが日本という国に誇りを抱けないという事実は別に驚くにあたらない,ほかならぬ日本の歴史教育の貧困さと相関関係があると思うのは,私だけだろうか。世界の数ある国を眺めてみるがいい,自国の伝統と文化を愛せないような風潮を醸成している国があったとしたら,その国の青年たちの心は荒廃し,病んでいくのは当たり前の話ではなかろうか。この国はいままで国を愛する心を軍国主義の裏返しとして,バカにし続けてきたではないか,今回のテロ以来,アメリカの愛国心の高揚に,実のところ多くの日本人は当惑し,苦々しく思っているにちがいない。しかし,平和主義が幻想にすぎないことを世界の歴史は数多教えていることを知っておいて損はない。




カルメンチャキ |MAIL

My追加