時々管理日誌
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2017年02月12日(日) 読んだことない本を読む(その2)

『有名だったり、いかにも自分が好きそうだったりするのに、なぜかまだ読んだことのない本を読む』という一人キャンペーンの話の続きです。

今回のもう一冊は、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』。

これも、本当に読んだこと無いのかどうか確信を持てななかったんですが……。
何しろブラッドベリは30年以上前から好きだったんだから、代表作のひとつであるこれを、読んでないわけがない気も。
単に、図書館で借りて読んだから手元に残ってないってだけかも?

……とは思いつつ、なにしろタイトルから内容を思い起こせないので、(まさかとは思うけど、たまたま読んでないのかなあ……)と。

でも、読み始めたら、連作短編集冒頭の『ロケットの夏』が、いきなり、間違いなく知ってる作品でした(^_^;)

でも、これ、1997年に改訂版が出てて、何作か差し替えられてるということで、もし私が読んでるとしたら旧版のはずだし、読んだかどうかわからないほど忘れてるなら読んでないも同じだし、もし覚えてても、好きな作品なら何度読んでもいいし……と、一応、また読んでおくことに。

結果、やっぱり読んだことあるけど、今でも好きだから、もう一回読んで良かったです。

火星年代記って、主に1940年代に書かれた作品で、作中で最初に火星にロケットが行くのが1999年、それから2026年までの火星での出来事が年代順に並んでるんだけど、1997年に出た改訂版では、年代が31年づつ繰り下げられてて、だから最初の火星ロケットは2030年になってるんですね。
読んでる人にとって、そのままでは作中の出来事が過去のことになってしまうので、未来にするための配慮らしいんですが……。

でも、茶色い肌に金色の瞳の火星人が緑の草原にプール付きの別荘を建て、青い水をたたえた運河に小舟を浮かべて火星葡萄酒を楽しんでる火星には、これから火星に行くロケットは、もう絶対にたどり着けないんですよね。
1940年代に見た夢の中でしか行けない、過ぎ去った未来。
もう、どの未来からも行けない場所。過去の中の未来。

そういう、『昔の人が見た未来の夢』みたいな、レトロSFが好きです。

2030年になっても、きっとブラッドベリはまだ読み継がれていて、そうすると、作中での火星に最初の有人ロケットがついた年が、その時点の読み手にとっての『過去』になってしまうかもしれないんだけど、その時はもう、作中の年号を書き換えて無理に時代を未来にする必要はないでしょう。
どうせ、火星年代記の中の『火星』は、もう、地球の外にはないんだから。
みんなの夢の中にしかない場所なんだから。

ブラッドベリの場合、たぶん、1940〜50年代当時にも、すでにノスタルジックだったんだと思います。
それに、当時のSF作家だって、実際に火星がそういうふうだとは想像してなかったのではないかと。
でも、まだ人類が火星の姿を見たことがなかった時代になら、火星にそういう夢を描くことが許されていたんですよね。
今でも、そういう火星を描いたって別にいいんだろうけど、その場合、その作品は、もう、SFではなくファンタジーとして扱われるのではないかと。
昔のSFには、今ならどう考えても異世界召喚ファンタジー扱いだろうってものも多いですしね。

……と、自分が好きなのがレトロ・フューチャーものだということを再確認して、だから、最近では秋山完さんの『懐かしい未来』系の作品が好きだった……と言おうとして、確認したら、秋山さんの『ペリペティアの福音』も、すでに前世紀の作品だったんですね!Σ( ̄ロ ̄lll)
つい最近だと思ってたのに……!orz

それでも、今も『懐かしき未来』『レトロ・フューチャー』ものは、一つのジャンルとして生きていて、私は今も昔も、それらが好きみたいです。

今、具現化したレトロ・フューチャーに手っ取り早く出会える場所は、東京ディズニーシーですね(笑)
私が愛したレトロ・フューチャーは、今、ポートディスカバリーに具現化している!(笑)


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