鍾乳洞の話はいったんお休みで、自作語りの続きを……。
・『先生』について
ちらっと登場した、担任の先生。 一見優しそうなこの『先生』が、実はけっこう、この事件について責任があると、私は思ってます。 先生の采配が拙かったことが、悲劇の遠因の一つかと。
自分で書いておいてなんですが、この先生、気は優しいし人は良くて悪気は無いけど、みゆちゃんにも指摘されている通り、若干心が弱いところや、困難から眼を逸らしたがる傾向があって、学級運営のスキルはやや不足ぎみなんじゃないかと……(^_^;)
自分も弱いから、弱い人の心の痛みは分かるし、空ちゃんの境遇に同情し早く友達を作ってクラスに馴染ませてあげたいと思う善意と熱意は本物だけど、一方で、そういう難しい事情を抱えた子供の担任という難しい役割は自分には荷が勝ちすぎると感じてもいる。 だから、空ちゃんをみゆちゃんに丸投げしておいて、「自分は、人望有るみゆちゃんに空ちゃんを託すという賢明な手を打ったんだ」というつもりを自分への言い訳にして、実は、難しい案件から逃げて、目を逸らしてる。
そもそも、日ごろから、自分の指導力への自信のなさから、しっかりものの学級委員のみゆちゃんに便利に頼りっぱなしで、いくらしっかりしているようでもみゆちゃんも他の子と同い年の子供にすぎないということにはあえて眼をつぶって甘えてたことが、歪を生んでいたのではないかと。
そんなふうに、善意の空回りと心の弱さから、子供たちの間の微妙な人間関係を無視して空ちゃんを強引にみゆちゃんを押し付けた結果が、あの悲劇の誘因になった……。 と、いうことで、うん、実は先生が一番の、影の有責者かも?(笑)
でも、だからといって、私は、先生が悪いとは思わないのですが。 大人だって、教師だって、万能じゃないしね。 どのクラスにも必ず金八先生がいるわけじゃない。
この先生は、きっと、決して悪い先生じゃないのです。 たぶん、ちょっと頼りないなりに、普通程度には良い先生で、優しい女先生として、子供たちの間での人気は、少々なめられながらも、そこそこ高いはず。 みゆちゃんだって、本当は先生が好きで、もっと甘えたいと思ってる。 ただ、分別のある優等生なので、そんな甘えたわがままは言えないだけ。 だからこそ、迷惑も顧みず(と、みゆちゃんには見える)何の遠慮もわきまえもなしに先生にべたべた甘えまくる空ちゃんや、空ちゃんだけを腫れ物に触るように特別扱いする先生が、よけいに腹立たしいわけで。
クラスのどんな難問もズバっと解決できちゃうスーパー・カリスマ教師ではなく普通程度の良い先生に過ぎなかった、なんてことは、別に、この先生の罪ではないと思います。 普通の大人が、正義のスーパー・ヒーローではなく普通の良い人でしかないのが別に罪じゃないのと同じ。
それでも、そんな風に『普通程度に良い先生』でしか無かったことが、めぐり合わせによっては、悲劇を呼んでしまう。 世の中、そんなもんかと。 世の中の人は、ほとんどが、普通程度に善人で、それでも日々あちこちで悲劇は起こり続ける。そんなもんでしょう。
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