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2002年02月01日(金) ダンスのステップを踏むように

『あらゆるものは通りすぎる。
誰にもそれを捉えることはできない。
僕らはそんな風にして生きている。』
(村上春樹『風の歌を聴け』)

通り過ぎていった友人、あのころいつも一緒にいた友達、いまはもう会うことのない友達、過去、思い出、忘却。無邪気だったあの時代、何もかもが新鮮だった幼きころ。戻りたいとは思わないし、感傷にふけることも普段はない。ただ、いまの「俺」を形作っているもののいくらかは、過去の光、音、少年の思い出。時の中で失われていくもの。時の中で磨かれていくもの。そのどちらが勝っているのか、それがその人の「成長」の度合いを決めるのではないだろうか。ただ通り過ぎていくのではない。「何か」を得ながら(得ようとしながら)、通り過ぎていきたい。そう思う。
そしてできることなら、いくつかの大切なものや人を、通り過ぎずに繋ぎとめておきたい。

『スペイン語はまったくできないし、英語も得意ではないので、彼らと何かをわかり合ったわけじゃない。単に出会って、通り過ぎただけだ。わたしは目的を持って、彼らの間を通過した。
 わたしはこれからもずっと、どこかに行く途上にいるだろう。途上にいるのは、落ち着かなくて不安定だが、たぶん何とかなると思う。
 ホセが教えてくれたダンスが、まるで生きもののように、わたしのからだにあるからだ。』
(村上龍『KYOKO』)


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