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■ ドアノブの位置
お正月、三日間だけ実家へ戻った。
暖冬という噂は本当らしく、新幹線の乗り換え駅の側のスキー場も、山肌が 見えるくらいにしか積もっておらず、閑散とした雰囲気だった。雪国である 実家の周りも、カラッとした肌寒さのみで、焦がれた雪景色は見られなかった。
さて、実家の一部がリフォームされていた。 祖父が建てた我家は、木造の古い一軒家である。30年前には、スカイブルーの 鮮やかな瓦屋根が目新しかったが、今ではあちこちが傷み、使い勝手が悪かった。 当時の祖父母の身長に合わせて作られた家具は、どれも低く、シンクで洗物を していると腰が痛くなったし、ドアノブの位置は総じて心持ち下に付いていた。
それが、である。 白い壁が眩しい台所は、淡い卵色で統一されており、ガスレンジは火を使わ ないIHクッキングヒーターになっている。それに、大きな食器洗い機も装備。 トイレはウォッシュレットはもちろん、上蓋は人が入ってくると、自動的に 開閉される。お風呂場は清潔なシステムバス(もちろん自動湯沸し機能付き) で、洗面台の三面鏡には、曇り止め防止ボタン(!)まである。
便利になりすぎではないか、と思いつつも、定年も近く、今後老いてゆく両親が 安心して生活するには、これでいいのだろう、と納得してみたり(苦笑)。 いずれにせよ、頑張って働き続けた両親が自分たちのためにやったことだから、 私が口出しする権利はない。第一、今更一緒に住むことはないだろうし。
ただ、残念だったこと。 広い玄関の1/4が廊下になっていたこと。門から庭へ入り、玄関のガラス戸を 引いたときに現われる、広くひんやりとした空気が漂う玄関を、私はこの上なく 愛していたので、ちょっとへこんだ。それに、タイル張りのお風呂場。 確かに冷たく、寒く、暗く、掃除が大変だったけれど、私はいろんな色が混ざった タイル張りの床や壁が好きだった。今となっては、思い出でしかないけれど。
それにしても、ドアノブの位置が皆上がったのは、長年の感覚を頼りに 「えぃっ」と暗がりでもドアノブを掴んでいた私には、調子っ狂いの種 だった。あると思った場所に手を伸ばし、空を掴む虚しさ。 あれに慣れるのも、時間の問題なのだろうか。
2004年01月07日(水)
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