月のシズク
mamico



 一日の終わりに、お味噌汁

味噌くさい女や、糠漬けくさい女は好きじゃない。
男たちが憧れるような、心から安堵してしまうような、やわらかな女。
家庭の匂いをぷんぷんさせて、エプロン姿で出迎えるような、そんな女。

私が女だからかもしれない。
だから、女たちの小狡賢いたくらみが、ぷんぷん臭うようで我慢ならない。
違う匂いを持った、同じヒト科のオンナたちに、私は軽い嫌悪と嫉妬を覚える。

それはそれとして、最近、夜にお味噌汁を作る。
具材は、大根と厚揚げだったり、葱とお豆腐だったり、溶き卵だったり。
冷蔵庫の残り物から適当にチョイスして、深夜と言われる時間帯に台所
に立つ。エプロンもせず、はだしのままで、鍋にお湯をわかす。

「味が濃かったら、椀にうつしてからお湯を差せばいいし、
 味が薄かったら、椀にうつしてからお醤油をまわせばいい」

なんとも家庭的な裏技を教えてくれたのは、恋人さんだった。
ヒト科のオトコである彼は、私よりずっと料理がうまい。
彼が手際よく作る豪快な料理は、繊細で豊満な味がする。
うちの小さな台所用に、自前のエプロンや中華鍋まで持ち込んだほどだ。

私は彼のために味噌汁を作らない。
自分で作ってもらった方がずっと美味しいだろうし、満足がいくと思っていた。
それでも時々ねだられて台所に立つ。彼は自分の椀に、お湯かお醤油を回す。
私が自分のために作る味噌汁には、なにも足さず、なにも引かないことにしている。


2003年10月15日(水)
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