月のシズク
mamico



 夏月間開始にあたって

突然の雨に降られて駆け込んだデパートで、水着を買った。
華やかで、カラフルで、装飾の多い、夏の風物詩的なソレではなく、
機能的で、シックで、美しい、流線型のソレ、つまり競泳用のものだ。

広い水着売り場の片隅に、申し訳程度に備え付けられたスポーツ水着の
コーナーは、それでも、品揃えだけは十分すぎるほどにあった。
付属のショートパンツも、パレオも、分厚い胸のパットもない、
スマートな競泳用水着のフォルムを、私は昔からとても気に入っている。

子どもの頃から泳ぐことが好きだった。
プールに行き水に身体を沈めると、意識せずとも、壁を蹴ってしまう。
両の腕で交互に前の水を掻き、大腿から足を動かし、前に進む。
とても自然な流れとして。

「今年の夏は、規則正しく、美しく」

なんて、大胆かつ大真面目な目標を立ててしまったからには、きっかけが
必要だった。物事にカタチから入るのは、実は嫌いではない。もちろん、
脅迫にならない程度のカタチなのだが。それが、競泳用の水着であっても
誰も文句は言わないだろう。背中がくり貫かれたその水着は、きっと、
泳いだときに、すべやかに水を切り裂いてくれるだろう。まぁ、希望的に。

真新しい水着を手に、なんだか小学生の一日刻み、あるいは一週間刻みの
「夏休みの計画」を立てているようで、少々気恥ずかしくもあるのだが。

2003年07月21日(月)
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