++ 恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制のボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影。(裏表紙より抜粋) ++ 文庫落ちを長らく待っていた作品。ようやく文庫化で早速読みました。 もっとドロドロとしたものを想像していたのですが、さすが石田氏。リョウがお仕事(≠セックス)を通して成長する姿が淡々と穏やかに書かれていました。 なので逆に、主人公のリョウよりも女性に目が惹きつけられます。女ってすごいけど、女ってこわい、というかんじ。特に、リョウの大学のクラスメイトのメグミがこわい。 リョウの言葉を受けつけず自分の価値観で縛ろうとする、その譲らない正義感。こういう女性の姿が、とてもリアル。こわいこわい。 ところで、リョウと同じクラブのメンバに、アズマという子がいるのですが、この子、とてもいいキャラをしているのです。とってもかわいい外見、真性マゾ(今年の春は体中を切りつけられることにはまったらしい)の性癖。自分をすごく理解している子で、彼のリョウとのセックス(かな?)シーンは痛々しいはずなのに、甘美なかんじでちょっと衝撃でした。
それはおかしな季節だった。日ざしは灼けつくようなのに暑くはない。世界全体が淡いブルーのサングラスをかけたようだった。熱をもたない青い世界で、ぼくは何人もの女性たちとセックスした。(略)誰ひとり似た人はいないのに、振り返ってみるとただひとりの女性を抱き続けていた気がする。
石田衣良:娼年,p.104,集英社.
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