A Will
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どこに行ったの?
起きて早々に、つぶやいた自分の言葉にぞっとした。
乱暴に掴まれたのを覚えてる。 髪の毛でも、手首でも、とにかく力任せにぎゅっと。
不思議だったのは、それがちっとも痛くないこと。 あんなに乱暴だったのに、一度も苦痛だと思わなかった。
そうだ。
思い出すたびに、あの冷たい手は、奇跡なほど優しかった。
どこに行ったの?
磁石が付いてるとしか思えない吸引力で、ぺたりと。 あの感覚。
忘れていなかったんだ。と思ったら、消えてしまいたくなった。
助けて。と次いで漏れそうな言葉に。
わたしは、自分の冷たくなった指で必死に口を押さえた。
涙は零れなかったけれど。
行き先のないのは、ため息も想いも、一緒なのだと、 妙に悟った気分になって、白く見えた息を睨むしか出来なかった。
奇跡だったのだ、と思い込む。
あの冷たさと、それと裏腹な優しさに。
わたしを掴むあの手は、きっと幸せだったのだろうと。
だからきっと。
泣き出してしまいそうだと、思うのは間違いであって欲しい。
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