A Will
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ほろ苦い人。
魅力的だと思ったから、だまされた。
だまされたら、喜んで笑顔を作ってくれたのが嬉しくて。
それにまた、ほだされた。
その人はよく笑った。 拗ねたみたいな口許が、ふわっと歪んで、 幼さを通り超えて、あどけない顔になるのが好きだった。
「もー全部どーでもいー」 そんな言葉も彼が言うと、なにか真面目で、 もっとはっきりといえば悲壮感が漂っていて、
だからきっと、それは単純な所有と言う欲望の対象じゃなかった。はず。
終わっていくものの、ただ中。 えぇと、そういうのってなんていうんだっけ?
「うたかた?」
『笑う君に眩しくて昏まされた。』
そう書いてある、中学生の頃のわたしの日記。
『一秒でも長く、一緒にいたいと祈ってしまった。』
彼が彼の人生で4度目の失恋をしたとき。 彼は初めて煙草を吸ったと言う。
「なんとなく暇だから」
泣いたような、泣き出しそうな声で でも彼が傷ついてるようには見えなかった。
どちらかと言えば、その印象は。 “感傷”を楽しんでいるだけにすら見えた。
しろくて、さえざえとしていた。
いつだって。
それが、彼の表層だとして。
わたしが知ってるのそのくらい。
奥まで冷えてるのかと考えたら、この気持ちに収集がつかなくなる。
『不確かな欲望。時々抑えきれないんじゃないかって怖くなる。 大人になればわかる、かな』
不確かは、確か、に変わることはなくって。 ただ、名前だけは見つかったりする。不意に。意地の悪い方法で。
戯れ、馴れ合い、取り込んだ憂鬱。
そういった名前のもの。
“大人になればわかる、かな”
そう淡い期待を残してたけど。 それの正体を、わたしまだ知らない。
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