俄か雨が降ってきて、慌てて私は窓を閉める。そうして水滴が筋を作る硝子窓越しに、庭を見下ろす。さっきまで晴れていたのに、灰色の重たい雲は一気に空を覆い隠してしまった。雷が、鳴るかも知れない。 其の侭、窓越しに外の景色を眺めながら、虚ろにどれほどの時間を過ごしたのだろう。眠っていたわけではないけれど、起きていたと言えるほど思考が明瞭だったわけでもない。何か考え事をしていてた気はするけれど、何を考えていたのかも判然としない。何時の間にか雨はやんで、時折晴間は覗かせるけれどもまだ空を覆ったままの灰色の雲の下、小鳥が、芝生をつついていた。私は静かに窓を開けようとするけれども、小鳥は飛び立とうとしない。手を伸ばせば届くのではないかと思えるほどの距離で、目が合った(気がした)。お互いに瞬きをし(た気がし)て、次の瞬間には、小鳥は何処かへ飛び去っていた。
何ということは無いのだけれど、其の後私は音を立てて窓を開け放って、小鳥の姿を追った。見つからなかった。自由に飛び立つことの出来る羽を、翼を持っている小鳥を少しだけ羨望して、私は再び窓を閉める。 たとえ誰もが翼を持っていたとしても、飛ばなければ、飛ぼうとしなければ、意味は無いじゃないの。
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