長い長い螺旋階段を何時までも何処までも上り続ける
一瞬の眩暈が光を拡散させて、現実を拡散させて、其れから?

私は、ただ綴るだけ。
音符の無い五線譜は、之から奏でられるかも知れない旋律か、薄れた記憶の律動か。








2004年10月26日(火)

 雲間に見え隠れしていた月の輪郭が、何処かもどかしい。

 天気予報は欠かさずに確認している。だから今日雪が降るかも知れない事も、今夜半から雪が降り、積もるであろうことも、認識はしている。――道理で寒いわけだ。そう感じるのも、理解の上。寒さは物理的なものだけでは決して無い。裡側で蠢く、何か。

 二ヶ月ほどの夏休みを経て、秋学期の開始から一ヶ月――同じ18時に講義を終えてバスを待っているだけなのに、空の色の違いに私は眼を細める事しか出来ない。
 月の位置が違うことと、太陽の昇降時間が変化したこと。風の匂いが変わったこと。残りは、精神的な問題が占める不快感の量の違い。

 冬の、日光の暖かさと、特有の冷気との、入り混じった空気は嫌いではない。夜の冴えた冷たさも、夏の惰性帯びた夜気より良いと感じることもある。其れが爽快感ではないとしても。
 疲労は、確実に私の視力を落としたようで、或いは脚と腕の痛覚に反映されたようで、身体的な疲労は私に睡魔を齎すけれど、私は、寝ることも侭ならない。
 ゼミ旅行の出発まで一週間を既に切っていて――事前調査等の、遣らなければならないこと、を「義務」として、私は、心休まる時を持たない。
 迷路。若しくは永久の回廊。
 合法的な家出を常に目標としてきた私は、つまり、どのような理由をつけてでも其れを正当化して「家」を出ようとしている私は、ずっと、迷路か、回廊か、其れに準ずるところを、走り続けてきたのだろう。
 之からも、ずっと。走り続けていくのだろう。

 腕時計を携帯する事は、私の義務。其の金色の秒針が留まる事無く時を刻み続ける限り、私は何処かへと追い詰められてゆく。










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