夜の海は、冷たく、水銀のような波が砂浜に打ち寄せて、其れから、砂は容赦無く足に絡みつく。 嘗ての友人は、六人集まった。 バレー少女Mと、介護士を目指すCと、私と。俳優だか声優だか志望のHと、私の後輩に当たるのかも知れないAと、情報系に進んだサッカー少年Oと。 前半が女、後半が男。私達の中では、一寸異色の組み合わせだと思う。集まる時は何時も九人だった、私達の中では。其の中で欠けることがあるとしたら、まず私だったから。だから、私が欠ける事無く私以外の三人が欠けるのは、珍しいことだったと思う。
甘えは、許されない。
夜の道は、昼とは全く異なる雰囲気に包まれて、Oの運転する車は珍しくも道に迷いながら――一時間ほど彷徨った後――目的地だった砂浜に辿り着く事になる。 私は始めてOの運転する車に乗り、私は始めて「夜遊び」なるものを実行した。私は母に 花火をするためにOが運転する車に乗って海まで行く とは言っていないし、私は友人に 母に全て諒解を得て参加した とも言っていない。私は、多分、二重に嘘を吐いた。
私は、本当は、どんな嘘を吐いてでも彼等に会うつもりは無かった。本当は。お盆だもの、如何にでも嘘はつけたのだもの。だけれど、其れ以上に家に居たくは無かった。だから、止まらない偏頭痛をおして、行った。
彼等は――彼等は、最早私の人生の中には必要の無い人物なのだと思う。中学のときに出会い、高校への進学で散り散りになったにも関わらず年に数回全員でつるんで。そんな関係をずるずると引き摺った仲間は。最早、私には必要の無いものだ。寧ろ、私は彼等との関係を続けることで彼等に甘えてしまう。自分自身への戒めを、緩めてしまう。だから、私は普段決して自ら連絡を取りはするまい。
甘えは、許されない。
帰宅して、私は後悔する。 何時もと同じ過ちを、繰り返す。
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