ヲトナの普段着

2005年04月22日(金) ドレサージュとエセS野郎

 なんだか某製薬メーカーの名前みたいだな。エセとは似て非なるもの。似非(えせ)のことである。したがってエセS野郎とは、Sの仮面をかぶったにせもの男。とりわけライブチャット界にあっては、話題にことかかないアノ罵詈雑言しっちゃかめっちゃか悪党のことをいうのであった。いや、僕がそう呼んでるだけですが……。
 
 
 人を人とも思わないという物言いがあるけど、「ひどいこと言われたのっ」といういたいけなチャトレちゃんの苦情は、ほんと後を絶たない。「どうにかならないかしら?」と言われるけど、例によって「どうにもならんがね」と返答するしかないのが哀しい。切ない。
 
 人間には支配欲というものがある。人によって個人差はあるものの、多かれ少なかれ誰もが胸に覚えがあるのではなかろうか。僕はSMというものにそれほど造詣が深いわけではないんだけど、Sの真髄というのは、Mが支配されることによって覚える快楽を「認めて」はじめて自身のSが成立することを知ってる人であろうと想像している。ちょっとわかり難い言い回しだったけど、相手を支配しててめーが悦に浸ってるだけのSは偽物だということ。
 
 これはセックスの醍醐味(?)に通じるものがあって、僕の場合だけど、相手の女性が快楽に浸っている表情を浮かべたり声に出したりすると、それが自身の快楽へと繋がってくるんだな。つまりそれは、僕が相手を快楽へと導いてあげてるからに他ならず、相手の快楽があってはじめて自分の快楽も存在するということになってくる。と書くとわかるかな?
 
 すなわち、一方的に暴言を浴びせたり命令口調でまくしたてる野郎は、Sでもなんでもなくて、単なる野蛮人に過ぎないということだ。本物のSであったなら、相手の反応を窺いながら手を変え品を変えるのではなかろうか。一方的に跪かせるのではなく、相手が跪きたくなるように仕向けるのではなかろうか。と、僕は思うわけ。
 
 けれど現実には、そこまで極めちゃってるS男なんてそうそういるもんじゃない。そのくせ弱い奴ほど強い男に憧れるのか、わけのわからんSもどきが、このウェブ世界にはうようよいるのが現実だ。実生活で思い通りにならないものだから、ネットで憂さ晴らししてやがる。ほんと始末におえない。
 
 
 ドレサージュという言葉は耳慣れないだろうか。日本語では「調教」と訳されるのかな。ドレサージュでふと頭に浮かぶのは、あのエマニエル夫人であったりO嬢であったりするわけだけど、およそ人の心に支配欲というものがあって、それが快楽と何らかの繋がりを持つからには、男と女が社会生活を営むようになったはるか大昔の時代から、ドレサージュは夜毎どこかで繰り広げられてきたのだろうと想像している。
 
 僕はドレサージュそのものを悪だとは思っていない。需要と供給という言葉があるけど、人間の欲望というものを俯瞰したときに、おそらくそれはしっかりとしたバランスで成立しているものなのだろうから。けれど、できもしないのにそこに手を触れたり、責任持ちきれないのに真似っこしたりするのは大嫌いだ。なぜなら往々にして、そういう奴らには、相手を慮る心が欠けているから。本物のSがMの快楽を認めているような、相互に行き来する心のバランスが皆無だからである。
 
 いまはあるのか知らないんだけど、パソコンゲームには育成シミュレーションというのがあって、女の子を自分好みの「女」へと育て上げるなんてのもあった。育て方次第で彼女はレディにもなれば娼婦にもなる。いわば彼女の運命は、かなりな部分をプレーヤーが握っているということになろう。しかしあの手のゲームでは、必ず「プロセス」というのがあった。エロい女にしたいからといって、いきなり「脱げ、おまえはエロいのだ」というひと言で彼女が娼婦になったりはしないのである。
 
 ドレサージュだって育成ゲームだって、そこにおけるプロセスが重要だというのは自明の理であろう。セックスだって同じだ。さっさと脱がせていきなりペニスぶち込もうったってそうはいかない。レイプまがいに犯罪おかすならいざしらず、共に快楽の道を歩むなら、やはり足並みそろえて段階を経ていかねばならないのだ。
 
 
 しかしライブチャットの世界には、そういうプロセスを経ることのできない余裕のない野蛮人が多すぎる。前述したような「憂さ晴らし」という背景もあるだろうし、また、分刻みにポイントを消費していくからという経済的理由もそこにはあるように思える。いずれにしても、それはてめーの欲望を満たすための論理でしかなく、やはり野蛮人の行為には違いないだろう。
 
 そういえばYahooのメッセにはメッセージアーカイブというのがあって、会話の記録が保存される仕組みになっている。あれをライブチャットの世界でも活用するといいのではなかろうか。あまりにひどい罵詈雑言を浴びせられたら、チャトレはその一部始終をID付で公表するのだ。そしてサイトに強制退室させる機能が備わっていれば、そういう輩を追い出すことも可能になってくるだろう。
 
 ネットにおける匿名性を覆すことは、そう容易いことではないと思う。それだけに、このような問題は、防御するシステムをしっかりとさせなければいけないはずだ。なんでもかんでもポイントを売ろうとする風潮を鑑みると、はなはだ険しい道のりなのかもしれないけど、チャトレが安心してチャットに専念できる環境を整えることも、サイトとして大切なことなんだと考えを改めて欲しい限りである。


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ヒロイ