ヲトナの普段着

2005年04月21日(木) すぐ逢いたがる男たち

 ライブチャットは「出逢い系」なんだろうか。たしかにそこでは、日々数多の男と女が出逢ってはいる。しかし出逢いのみを出逢い系の条件とするならば、個人のホームページにある掲示板だって立派な出逢い系に違いない。けれど人は、そこを出逢い系と呼んだりはしないのである……。
 
 
 そもそも「出逢い系」なんて意味不明な呼称がどうしてこうも持て囃されたのか。インターネットをコミュニケーションツールとして捉えれば、そこでは必ず人と人との出逢いがある。出逢い系なんてカテゴリーをわざわざ作らなくても、ネットは出逢いの場じゃないか。商用バレンタインデーに踊らされた民族は、ネットでも見事に「呼称;言葉」に踊らされてしまったということなのか。「出逢い系」ときくとなんとなく出逢いが待っていそうな気がする。ときめきがそこで両手を広げて迎えてくれそうな気がする。だから「出逢い系」は持て囃されるんだろうけど、その実、やってることは(全てとは言わないが)、ちゃんちゃらおかしいじゃないか。
 
 おそらく、出逢い系サイトを利用する男の大半は、セックス目的だろうと僕は想像している。なんだかんだ言ったって、遊興が文化を牽引するのはあのファミコンにはじまるゲーム業界の繁栄をみても確かだし、このパソコンの世界だって、昔に遡れば8ビットから16ビット、そして32ビットとマシンを進化させたのは他でもないゲームの世界だった。男と女という生き物がうごめく世界にあって、三大欲のひとつとも言われる性欲を満たすものがこのネット世界を牛耳ろうとしていても、なんら不思議はないのである。
 
 そのような状況のなかで、男と女がカメラ映像と音声や文字でやり取りする場が登場すれば、それを出逢い系と捉える向きもわからなくはない。しかしそれでも、僕がここであえて言いたいのは、「ライブチャットをいわゆる出逢い系と一緒にするな」ということなんだ。
 
 
 うちの「置屋」がサポートしてるチャトレに話をきくと、とにかくノッケから「どうにかして逢えないだろうか」という道を模索してる客が多いことに驚かされる。すぐ逢いたがる男たち、だ。ライブチャットで働いているチャトレたちは、あたかも「欲求不満の女たち」とでも思っているのか、何のためらいもなくその手合いは「逢ってセックス」を目指すらしい。ニッポン男児も、ついにそこまで成り下がったかっ!の心境である。
 
 そういう男連中の話を耳にするにつけ、おやじは心底「遊びを知らない男の増殖」を嘆くわけさ。ライブチャットとはいえ、チャトレだって生身の女だ。ときに客に真剣に恋をし、オフラインで逢瀬を重ね、心のみならず肉体を絡めることだってあるだろう。それが間違った道だとはぜんぜん僕は思ったりしない。しかしそれは、恋愛という手順をしっかりと踏んだ上での流れであって、「誰でもいいからオレの精子を受け止めてくれ」というアホの論理とはまったく別のものなのだ。
 
 これは別口で書こうかとも思ってたんだけど、とにかくこのライブチャット界においては、女の愛し方を知らない男が多すぎる。チャットエッチが悪いとは僕は思わないけど、相手の心と体を考えられない一方的な行為は、エッチとは言わないんだ。それは単なるオナニーでしかない。だったら、チャトレ相手にせずにビニ本抱えてろと、いつか書いた覚えもあるな……。
 
 夜の繁華街を徘徊するときも、「抜き目的」のヘルスやサロンならいざ知らず、おねーちゃんとの会話を楽しむクラブでいきなりズボンを脱ぐアホがいますか?ソファに座って開口一番「ホテル行こうぜ」と言うアホがいますか?遊びにだってね、手順ってのがあるんだ。ホステスを口説きたければ、あしげく通って優しさをアピールし、更に心と心で交われる相性があってこそ口説き落とせるんだよ。それが「すぐ逢いたがる男たち」にはまーるでない。ぜんぜんない。
 
 
 いわゆる出逢い系サイトというのは、女を求める男が集い、男を求める女が集う場だろう。だから双方の思惑が絡み合って出逢いは成就する。綺麗だろうが汚かろうが、セックスのみであろうが、それは双方の目的が合致して成立する出逢いなんだ。でもね、ライブチャットってのはそこが違う。チャトレたちすべてが出逢いを求めているわけじゃない。密かにそれを求めているとしても、来る男すべてにそれを求めているわけじゃないんだ。だから僕は、ライブチャットは出逢い系ではないと考えている。片方だけの思惑でカテゴリーにはめ込んでしまうのは、やはり無理があるだろうから。
 
 本当の遊びを知っている大人たちは、本当の女の愛し方も心得ているのだと僕は思う。てめーの欲望を最優先するのではなく、それを抑えこんでもチャトレの幸せを願える姿勢こそが、僕はチャッターの真髄ではなかろうかとも思っている。そういう真のチャッターがこのライブチャット世界に少ないのが、僕は本当に悲しい。大好きな世界だけに、汚されかき回され乱されていくのが、厭で厭で仕方がないんだ。
 
 女を愛することすらできないくせに逢おうなんて思うんじゃない。まずはてめーの心を鍛えなおせよ。出逢いはそれからだ。悔しかったら、黙ってても女のほうから逢いたくなるような男になってみやがれ。どうせ「すぐ逢おう」くんには無理な離れ業だろうがね。


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ヒロイ