今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年12月24日(木) 国立市のマンション問題で国立市元市長に3100万円の賠償命令

 日経(H27.12.24)社会面で、東京都国立市が、マンション建設をめぐる過去の訴訟で敗訴したのは上原元市長の責任だとして約3100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は、請求を認めなかった一審判決を取り消し、元市長に全額の支払いを命じたと報じていた。


 記事は簡単な内容であるが、この訴訟はかなり複雑な経緯をたどっている。


 もともとは、明和地所が国立市にマンション建設を計画し、工事を開始した後に、国立市が高さ制限をする地区計画を制定したことが問題になった。


 そのため、明和地所が、国立市に対し、営業を妨害されたとして損害賠償と地区計画の無効を求めた訴訟を提起し、東京高裁は、条例は有効としたが、国立市の行為は営業妨害にあたるとして、2500万円の請求を命じた。


 判決を受けて、国立市は、2500万円に遅延損害金を付加した約3100万円を明和地所に支払ったが、明和地所は、同額を国立市に寄付したため、国立市の損害は計算上はないことになった。


 ところが、国立市民4人が、明和地所に支払った損害賠償金と同額を、国立市が上原元市長個人に対して請求するよう住民訴訟を起こし、東京地裁はこれを認め、判決は確定した。


 この判決を受け、国立市は、上原元市長に対して支払いを請求したが、上原元市長が支払いを拒否したことから、上原元市長に対し3100万円の請求を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした。


 なお、国立市の議会は、国立市の上原元市長に対する請求権を放棄する旨の議決をした。

 
 上記訴訟で、東京地裁は、明和地所の国立市に対する寄附によって国立市の財政における計算上は損失がないともいえること、国立市議会が上原元市長への請求権を放棄する旨の決議をしていることなどを理由に、国立市が上原元市長に対して請求することは信義則に反して許されないとした。


 上記の理由に加え、個人に対し3100万円もの請求を認めるのは酷であるとの判断があったものと思われる。


 ただ、法理論的には東京地裁の結論はなかなか難しく、本来であれば国立市の請求は認められるべきであろう。


 それゆえ、東京高裁が、一審判決を破棄して、請求を全額認めたことはやむを得ない。


 上原元市長は上告するとのことであるが、結論が変わることはないと思われる。


お知らせ

本ブログは平成27年12月28日をもって終了いたします。
長らくのご愛読ありがとうございました。

弁護士 土居範行



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