2015年12月17日(木) |
再婚禁止規定についての最高裁判決の問題 |
日経(H27.12.17)1面で、女性の再婚禁止期間を定める民法の規定が憲法違反か否かが争われた訴訟で、最高裁大法廷は、「6か月の再婚禁止期間を定めた規定は100日を超える限度で違憲」と判断したと報じていた。(なお、同日、初夫婦別姓を認めない規定は合憲とした。)
民法772条1項2項により、婚姻成立の日から200日後、または離婚から300日以内に生まれた子は、夫の子と推定される。
この規定により、離婚直後に再婚し、例えば250日後に子どもが生まれた場合、「前夫との婚姻の解消の日から300日以内」の生まれた子なので前夫の子と推定されると同時に、「婚姻成立の日から200日後」に生まれた子どもなので後夫の子とも推定され、いずれの子か不明になってしまう。
そのため、一定期間の再婚禁止を定め、いずれの子かが不明になることを避けているというのが再婚禁止期間を設けている趣旨である。
しかし、100日間だけ再婚を禁止すれば推定の重複は起こらないので、6か月間も再婚を禁止する必要はない。
このような理由から、最高裁は、「再婚禁止期間について100日を超える部分は違憲」とするとともに、100日までの再婚禁止期間は「父子関係を早く確定して、子の法的な身分を安定することは必要であり合憲」と判断した。
確かに、100日間の再婚禁止期間を設ければ、推定の重複は解消され、いずれの夫の子どもかが分からなくなるという事態はなくなる。
しかしこの場合、女性が離婚し、100日間の再婚禁止期間後に結婚して、それから200日以内に生まれた場合には、前の夫の子と推定されるのである。
しかし、これは事実と合致しているのだろうか。
生まれてきた子は、後夫の子であることがほとんどではないだろうか。
つまり、再婚禁止期間を設けて推定の重複を避け、父子関係を早く確定させたとしても、それは前夫の子と推定されるのであるから、子の利益にはなっていない。
最高裁の判決(多数意見)は、かかる視点が一切抜けているように思われる。
お知らせ
本ブログは平成27年12月28日をもって終了いたします。 長らくのご愛読ありがとうございました。
弁護士 土居範行
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