今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年12月16日(水) 「爆発物」とは

 日経(H27.12.16)社会面で、靖国神社内の公衆トイレで爆発音がした事件で、トイレで見つかった金属製パイプから黒色火薬の成分が検出され、警視庁は、建造物侵入容疑で逮捕した容疑者が時限式発火装置を仕掛けたとみて、火薬類取締法違反容疑を視野に捜査していると報じていた。


 「爆発音」「金属製パイプ」ということからすれば、爆発物取締罰則の適用も考えられるところである。
(爆発物取締罰則は、死刑または無期懲役、若しくは7年以上の懲役または禁錮となっており、非常に罪が重い。)


 しかし、爆発物取締罰則を適用するためには「爆発物」を使用した場合でなければならない。


 「爆発物」の意義について最高裁は、「理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合する物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものをいう」としている。


 何だかよくわかないが、例えば、密閉した容器に火薬を入れて爆発させ、容器内で急速に高圧を生じさせて容器を破裂させるような現象を起こさせるものが「爆発物」にあたる。


 逆に言えば、爆発性能がかなり弱く、その爆発作用そのものによって、公共の安全をみだすには足りず、また、人の身体財産に対し極めて軽徴な損傷を与える程度に過ぎない場合には、『爆発物』とはいえない。


 例えば、ラムネ瓶にカーバイドを詰めこれに水数十グラムを注入し、これを倒して投擲する、いわゆるラムネ弾について、最高裁は「爆発物に該当しない」と判断している。(その事案限りの判断ではあるが)

 
 カーバイドと水を化合させるとアセチレンガスが急激かつ多量に発生する。一方、ラムネ瓶を倒すことによりラムネ玉が瓶の口に詰まって密閉され、瓶内で噴出が続けるガスの圧力が急上昇する。そして、ラムネ瓶が爆音を伴なって破り、破片を飛散させるものである。


 しかし、威力としてはかなり弱く、これを「爆発物」と認定することはできないであろう。


 冒頭の靖国神社の爆発事件で、警視庁が爆発物取締罰則の適用を考えていないのは、その威力は相当程度低く、到底「爆発物」と言えるものではなかったためと思われる。


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長らくのご愛読ありがとうございました。

弁護士 土居範行


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