今日の日経を題材に法律問題をコメント

2008年07月29日(火) 企業価値研の第三次報告は司法判断に抵触するか

 日経(H20.7.29)27面の「経済教室」で、ブルドックソース事件の会社側代理人であった弁護士が、企業価値研(経産省の私的研究会)が発表した買収防衛策の第三次報告書について、最高裁の判断と抵触するなどとして批判する論評をしていた。


 ブルドックソース事件では、買収者に対し金銭的補償がなされたが、最高裁は、それを買収防衛策発動が相当であることの一判断要素として認めた。


 これに対し、企業価値研の第三次報告書では、買収者に金銭的補償をすることにより相当性を充足させて、買収防衛策を発動することは妥当でないとしている。


 前記論者は、このような企業価値研の考えは司法判断に抵触するものであり、実務が混乱するばかりでなく、三権分立に反するという。


 確かに、買収防衛策が適法か否かのレベルでは、司法判断がなされているのであるから、その判断基準に依拠すべきであろう。


 しかし、企業価値研の報告書は「日本の企業社会の行動規範となることを期待」しているのであるから、法律に反するかどうかのレベルではなく、妥当かどうかのレベルの問題として捉えるべきではないだろうか。


 そのように考えた場合、買収者に金銭的補償をすることにより相当性を充足させることは妥当でないとする第三次報告書の考えが不適切とは思わない。


 実際、ブルドックソース経営陣の取った買収防衛策については疑問がある。


 買収問題が起こる前のブルドックソースの株価は330円前後であった。


 その後、買収者のスティールは公開買い付けで1株の価格を1584円とした(これが適正価格かどうかはよく分からないが)。


 これに対し、ブルドックソースは買収者に金銭的な補償を行い、またコンサルタントや法律事務所に多額の費用を費やして防衛に成功した。


 ところが、現在の株価は250円前後であり、買収が問題になる以前の株価よりも100円近く下がっている(日本の株式全体が下がっていることは考慮に入れる必要があるが)。


 企業価値を損ないかねないほどの防衛費用を投じ、株式の価値を下げてしまったブルドックソースの経営陣に問題はなかったのだろうか。


 他の企業の行動規範といえるような対応だったのだろうか。


 その意味で、「日本の企業社会の行動規範となることを期待」することを目的として発表された企業価値研の報告書は、何ら司法判断に抵触するものではないし、むしろ意義あるものであると思う。


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