2002年02月20日(水) |
盗まれた通帳の引き出しに、銀行の責任を認める |
日経社会面に、盗まれた通帳で預金を引き出された事件で、銀行の過失を認めた判決の記事が載っていた。
近時、ピッキングによる事務所荒らしが多発し、盗まれた通帳から多額の預金が引き下ろされることが頻発しているが、その中のいくつかは、被害者が、銀行に対し、責任を問う裁判を起こしている。
しかし、判例の流れとしては、銀行の責任を否定したものが多かった。 これは、あまり銀行に注意義務を課すと、事務処理に慎重になり、事務処理の迅速性が害されるという価値判断があったのだろう。
それゆえ、今回の判決は、銀行にとって衝撃的だったのではないだろうか。
預金の払い戻しは、これまで払戻請求書に銀行印を押して、払い戻しを受けており、銀行は、印鑑の照合さえ注意すればよいように思われてきた。
しかし、今後は、
払戻請求書の住所が届出住所と僅かながら違う、
当該預金者の住所以外の場所の支店で多額の払い戻し請求している、
払い戻し請求者が挙動不審である
などといった事情がある場合には、
運転免許証等でその人の身分を確認した上で払い戻しをするようなシステムにすべきではないだろうか。
そのようなことをすれば、トラブルが起きたり、客が逃げるというかも知れない。
しかし、事前に身分を確認することがあるということを周知徹底すればトラブルは防げるであろう。
むしろ、セキュリティーを重視していることをアピールすることができ、高額預金者の顧客を獲得できるチャンスにさえなるのではないか。
犯罪はどんどん進化して、犯罪者はあの手この手の手段を考える。 それゆえ、ある程度の便利さは我慢してでも、セキュリティーを重視すべきで時代になってきていると思う。 冒頭の、銀行の責任を認めた判決に対しても、銀行実務を分かっていないと憤るよりも、セキュリティーをより一層重視すべきであるという警告と受け止めるべきではないだろうか。
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