2002年02月15日(金) |
弁護士の調査能力について |
日経18面の「公正な市場へ 監視委は変われるか」というコラムが連載されている。
その中で、監視委の摘発能力は不十分であるということを書いており、そのようなことから、ある弁護士が、不正を犯した証券会社や企業を相手取り民事訴訟を起こす「民間特捜部」を立ち上げるそうである。
「民間特捜部」の詳しい内容が分からないが、弁護士に、監視委以上の調査権限が付与されているわけではないので、監視委以上の期待はできないと思う。
そこで、弁護士の調査能力について、少しコメントしたい。
相談者の中には、弁護士に頼むと、何でも調査できるように誤解している人が多い。
確かに、弁護士会を通じた照会制度というのがある。 これは、相手方に照会書を送ると、その回答を得ることができ、それによって一定の調査は可能である。
したがって、一般の方よりも、調査権限は与えられている。
以前は、この弁護士会照会制度により、相手方の預金残高を知ることもできたこともある。しかし、最近は、すべての金融機関が、そのような照会には応じていない。 つまり、相手方が断れば、それ以上の強制力はないのである。 また、アメリカでは、訴訟の中で、証拠開示制度(ディスカバリ)というのがあり、これによって相手方の持っている証拠を徹底的に調べることができる。 しかし、日本ではそのような制度はない(文書提出命令の制度はあるが、裁判所は提出命令を出すのに消極的である)。
結局、弁護士には、そもそも、法律上、大した調査権限が与えられていないのであり、当然、調査能力も限定的なものにならざるを得ないのである。
整理回収機構は、債権回収に一定の成果を上げているが、それは中坊さんが優秀だったというよりも、それなりの回収権限を法律上与えられたからである。
要するに、調査能力に限っていうと、そもそも調査権限がないのだから、弁護士に過度な期待は止めた方がいいということである。
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