2002年02月14日(木) |
証取法の規定は合憲の判決−日経の記事は大げさである− |
昨日の日経夕刊1面に、上場企業の大株主が短期間の売買で利益を得た場合、企業側が利益返還を請求できるとした証券取引法の規定(164条)について、最高裁は合憲の判断を示したという記事が載っていた。
この判決について、日経は、「同条に関する最高裁の判断は初めてで、証券取引の透明性確保につながりそうだ。」との評価を下していた。
しかし、それは大げさではないか。
これまで、この規定の合憲性が問題視されており、実務で判断が待たれていたというのなら分かるが、そのようなことはなかった。
また、この規定はすでに広く知られており、この判決がきっかけとなって、かかる規定の広報効果が期待されるということもない。
その意味では、最高裁が合憲の判断をしたからといって、実務的な影響はないだろうし、この判決がきっかけで、「株不正取引防止に寄与」(日経の見出し)することもないだろう。
では、なぜ最高裁は、このような合憲性の判断をしたのか。
それは、2審で敗訴して最高裁に上告する場合、2審の判決に憲法違反がある場合に制限されているため、上告理由で、憲法違反を主張せざるを得ないからである。
そして、上告人の憲法違反の主張に対し、最高裁も答えざるを得ないので、冒頭のような判決がなされただけである。
おそらく、上告人も、憲法違反の主張が認められるとは思っていなかっただろう。 それなのに上告したのは、意地になっていたからではないだろうか。
いずれにせよ、新聞の記事は、大げさに書きがちであるので注意が必要である。
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