2002年01月29日(火) |
「見せ金」は刑事処罰の対象になる |
日経・社会面で、神田信用金庫元理事長が、不動産会社を設立する際、他の金融機関から借り入れて株式の払込を行い、設立後、払込金を引き出して、金融機関に返済したという容疑で(いわゆる「見せ金」である。)追送検されたという記事があった。
見せ金とは、上記のように、株式払込金を他から借りてきて、会社を設立し、設立後、払込金を引き出し、借りた先に返還することをいう。
このような「見せ金」が有効か無効かは学説上は争いがあるが、判例は、見せ金は会社に資本金がなくなるのだから、資本充実責任を害するという理由で無効としており、また、かかる行為は公正証書原本不実記載罪が成立するとしている。
「見せ金」の論点は、会社法の最初のころに勉強する箇所なので印象が強く、勉強中は、「見せ金」は無効であり、刑罰の対象にさえなるという考えが頭に焼き付いていた。
ところが、実務に出ると、「見せ金」は普通に行われているのである。 ときには、依頼者から会社設立の相談を受け、「他から借りてきて払い込んで、すぐに返せばいいんですよね」、なんて、まともに聞いてくる人もいる。
しかし、こちらは、それが刑罰の対象になるという考えが身に染みついているから、「それでいいですよ」なんてことは答えられない。
そのため、、「それは無効とされていますよ。」とやんわり言うか、場合によっては、「税理士さんか司法書士さんに相談してみたら」とか「会社を設立してから相談に来て下さい」とか言って逃げることもある(融通の利かない弁護士だなと思われたかも知れない)。
しかし、いざとなったら、新聞記事のように刑事処罰されるのである。
「いざとなったら」とはどのような場合かというと、新聞記事のように、他の犯罪で逮捕されてたまたま発覚したケースと、会社の主導権争いから、一方が裁判で無効を主張したり、告発したりして発覚することが多いようである。
したがって、内部紛争の可能性のある人が、新たに会社を設立する際は、見せ金なんて誰でもやっているなんて甘い考えを持たずに、注意した方がいいだろう。
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