2002年01月21日(月) |
セキュリティ対策を怠ったことによる損害賠償請求 |
日経15面に、「ブロードバンド ウィルス自己防衛不可欠の時代に」という記事があった。 ブロードバンドは常時接続のため、セキュリティ対策が重要な問題になるという内容であった。
では、仮にセキュリティ対策を怠って、人にウィルスを送りつけてしまい、送りつけた人から損害賠償請求されたら、それは認められるだろうか。
そこで、まず、ウィルス対策を怠り、人にウィルスを送りつけたことが過失といえるかどうかが問題になる。
今日では、ウィルスについての情報はある程度知られているから、対策の必要性が分からなかったとはいえない状況である。 したがって、きちんと対策を採らず、ウィルスに感染し、人にウィルスを送りつけてしまったら、多くの場合は過失があるということになろう(そのウィルスがまったく新種のウィルスであり、セキュリティ会社でも対策が採られていなかった場合などは別であるが)。
では、損害はいくらと認定されるのだろうか。
損害として考えられるのは、重要なデータが消失したこと、その人がさらにウィルスを送りつけてしまい損害賠償の請求を受ける可能性が生じたことなどであろう。 また、第三者に重要なデータが流失した場合には、それによる損害も問題になる。 しかし、データの消失については、そもそも、データはバックアップしておくべきものであり、バックアップを怠ったことは過失相殺の対象となるから、多額の認定は見込めないであろう。 また、重要なデータが流失した場合には、深刻な問題であるが、データの流失とそれによる損害との間の因果関係は希薄になっていくから、因果関係がないとして損害が認められないこともあろう
最後に、過失相殺の問題がある。 ウィルスを送りつけられたといっても、きちんとセキュリティ対策を講じていれば、感染することはなかったからである。 しかも、前述のようにウィルス対策は講じることは常識となってきているから、過失割合はかなり高いものになるだろう。
このように考えると、人からウィルスを送りつけられて損害を受けたとして、損害賠償をしたとしても、認められる額は多くはないのではないだろうか。
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