その昔よくセミとりに行った。
とれるだけとったら、家に持ち帰り、一室を締め切って、放す。 そして、またつかまえる。 狭い室内だからぼこぼこつかまる。 全部つかまえたらまた放す。
つまりセミのつりぼり状態。 そうやってセミとりの腕を磨くのだ。
最後には全部逃がすのだが…
いつものようにセミとりトレーニングを終え 快い疲れとともに床につく私。
その丑三つ時。
ジ――――――
突然の怪音。飛び起きる私。
ジ――――――
声の主はすぐに知れた。セミである。
6年土の中でじっと耐え、ようやく日の目を見たものの、 さして年の変わらぬ私に弄ばれたセミの復讐劇!!
慌てて電気をつけるがおさまらず、その目の前を横切った黒いもの。 一匹、逃がし忘れていたのだ!
捕まえようにも寝ぼけ頭では勝ち目はない。 それからの時間の、なんと長かったことか。 同じ部屋で寝ていた祖父母の加勢を得て、セミ一匹を追い回す。
ようやく逃がしたセミの後ろ姿を見送って、 そのあとこってりしぼられたのは言うまでもない。
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