「死ねっ!」 もはや逃げられぬと浪士は刀を抜き、沖田に斬りかかる。
「しょうがないなあ…」 身を低めたこちらも刀に手をかけ…
しかしそのとき私の脳裏に駆け巡る、刑務官必携「矯正護身術」!! 〜前突き〜 1 短刀持つ腕引き相手の体を崩し、 2 手の甲で目潰し、 3 左後ろに後退しながら脇固めで制する
ほい!えい!とりゃっ!!
「いてててて」
脇固めで制した。
「田中君!何してんですか!」
すすすすいません!職業病なんで!
「この野郎!」
もう一人の浪士が私目がけて突いてくる。 ひぇえええ!!
逃げようとしたが足がもつれてすっ転ぶ。 私にけつまづいて相手も転ぶ。 その拍子に、刀がもう一人の浪士の袴に刺さり…
「待て!」 振り上げた瞬間、
ビリリリリ。ふんどしまで見事に真っ二つ。一同、沈黙。
「桂!おれをひんむいてどうする!」 「私もできれば見たくはなかった!」
仲間割れする浪士たち。
なんかもう手を出すに出せなくなった新撰組。
「…帰りますか」 「帰ろうか」
見なかったことにした。
〈続〉
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