* 世界一ついてない日常
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2003年10月22日(水) 歯が痛い!2

とうとう来てしまった。魔の水曜日。

インターネットは文明の利器。
誰もが情報の発信者となり、また受け手となる。

私は、世界に向け、今日歯医者に行くと宣言してしまった。
言ったからには、今日歯医者に行かねばならない。

…まったく何てこと言いやがった。

まず、電話帳で近所の歯医者を調べ、予約の電話をする。
(嫌だからぎりぎりまで引き伸ばした)

ぷるるるる。ぷるるるる。ぷるるるる。

出るな!頼む出るな!休みであってくれ!

「はい、馬乃歯科」

出るなって言ったのに…。

あの、今日これから予約ってできませんよね?ね?

「いえ、3時からなら空いてます。どうぞ」

は。はい。

…。私のあほバカちん!
なんでわざわざ自ら災難を招くような真似をしたのだ!
虫歯なんて黙っていればバレないのに!

そして、3時になった。
私はまだ家でもたもたしていた。
何か急用でもできて行けなくなるのを期待していた。

何もなかった。

このままドタキャンしてしまおうか…。
悪魔の囁き。
しかし電話の向こうのお姉さんのことを思えばそれもできない。
だって、ひょっとしたらきれいなお姉さんかもしれないではないか。

私は覚悟を決めた。

そして…5分ほど馬乃歯科の前で躊躇った挙句、
さすがに通行人の目が気になりだし、已む無くご来店。するやいなや。

「お電話の方ですね。どうぞお入りください」

早い!早いよ!ま、まだ心の準備が!
だって他に患者はいないの?!
ま、まさかここ、付近住民避けて通るヤブ歯医者なのではないか?!
そういえば待合室もなんだかヤブっぽい!

「こちらへどうぞ」

そういわれればお姉さんも変に愛想が良い!
それもこれもみな私の目を欺くため!!
そして私は切り刻まれ臓器ブローカーに卸されるのだ…
なんと儚いわが人生…

「ふふっ大丈夫ですよ」

え?あれ?
…ひょっとして歯医者怖がってると思われた?
ちちち違いますよっ!!
なんでいこんなもん、こんなもん。

ズカズカズカ工事現場…もとい、診療室の中に入る。
さしてきれいでもきたなくもない部屋である。
歯科助手のお姉さんお兄さんもさしてきれいでもきたなくもない。

椅子に座れと促され、座る。
が。次の瞬間。

「倒しまーす」

うおあぁっ!!だまされたっ!!!
キュイイイン。
妖しの魔法で椅子はたちまちベッドになり、
その上に寝かされた私はまさしく俎板の上の鯉!

動悸息切れ手に汗握り、血圧心拍とどまることなし。
その私にお姉さんはさっさとエプロン装着、「先生」を呼ぶ。

「やあこんにちは」

ついにラスボス大魔王登場!!!

黒ぶちメガネに禿げかけた頭。
見れば見るほど臓器ブローカーに見えてくる。
恐ろしさのあまり失神しそうになる私に、

「どこが痛いの?」

聞くなり口の中をまじまじと覗き込む。顔が近づく。
♪見つめ合〜えば〜♪
やめろ!私にそんな趣味はないんだ!

銀色のピンセットを取り出し、銀歯を一個ずつこんこん叩いてくる。

「これ痛い?これは?」

話しかけるなというに!
いひゃ、ほへははいひょうふへふ。
あ、ひゃい、ほへひょっといひゃいへす。

「じゃレントゲン撮って。今日はそれでおしまい」

え?

聞くところ、外見は特に異常なく、
おそらく原因は銀歯内虫歯か、親知らずだろうとのこと。

助かった!!奇跡だ!!

嬉しさに男泣きしかけて――

「次は親知らず抜こうか」

…涙が出てきた。


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