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2012年09月11日(火) ■ |
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サブカルが「切ないジャンル」である理由 |
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『サブカル・スーパースター鬱伝』(吉田豪著・徳間書店)より。
(「文系男子(サブカルもの)は40歳で鬱病になるって本当?」というテーマで、吉田豪さんが11人の「文化系有名人」にインタビューした本の一部です。枡野浩一さんの回より)
【枡野浩一:でも、リリー・フランキーさんや松尾スズキさんみたいにお金があっても憂鬱になるのかと思うと……。
吉田豪:サブカルは成功した人たちがみんな病んでるからこそ、切ないジャンルなんですよ。
枡野:どうしたらいいんでしょうね? 僕も最近は変に名前だけ知られて、出版社のパーティーとかに顔出すとみんな僕の顔は知っているんだけど全然仕事してない感じだし。あと、ユーストリームのせいか駅とかで声かけられたりサイン求められたりして、「観ました」ってすごく言われるんだけど、顔がそんなに知られてても全然いいことないし……。
吉田:もういっそユースト有名人みたいな感じで、そっちで特化していけばいいと思うんですよ。文字だと冷静すぎて冷たく捉えられることが、枡野さんの可愛い系のしゃべりで中和されるからいいんですよね。
枡野:なんか、そう言われると自分にとっての大切さよりも需要のほうが大事だから、需要あるならやろうかと思いますね。たとえば本がまったく売れなかった時期のほうが、いつかは売れるかと思ってたから幸せで、半端に売れて「あ、こんなものか」と思ったときに、たぶん能力的にこれ以上にはならないから、ホントに希望が持てなくなっちゃって。
吉田:現実が見えたわけですね。
枡野:短歌も、僕、短歌の世界ではあまりにも有名になっちゃったし、影響力もあったので、結構飽和しちゃってて、もう枡野は若い世代の歌人にとって「乗り越えられていく存在」なんですよ。ハッキリ言うと終わった歌人というか。たぶん自分の表現はどんなに頑張っても、かつて自分がしたこと以上のことにならないと思っているから、頑張りようがないですよね。それをないことにして現役であるような振りをすることはできないから。誠実にやっているつもりですけど。
吉田:誠実すぎますよ!】
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「サブカルは成功した人がみんな病んでいる」か…… この対談集を読んでいると、『東京タワー』のリリー・フランキーさんをはじめとして、みうらじゅんさんや松尾スズキさんなどの「サブカルドリーム」の体現者たちが、40歳を境に、次々と鬱になっていっているんですよね。
この枡野浩一さんの話を読むと、もちろん「誰にも相手にされない、成功できない」ことは大きなストレスなのだけれども、枡野さんくらい歌人・作家として認められても、それはそれで「自分は認められても所詮、こんなものか」とかえって幻滅してしまうことがあるのだなあ、と。
それは、ものすごく贅沢な話ではあるんだろうけど、本人にとっては、他人が何と言おうと「自分が見ている世界」っていうのは、そう簡単に変えられるようなものじゃないですしね。 それこそ、成功して、有名になったとたんに「成金ワールド」に突入して、天狗になってしまえれば、本人にとってはラクなんじゃないかと思うのですが、文化系にとっては、「成功してしまうことへの罪の意識」みたいなのもあったりして、なんというか、とにかくややこしいみたいです。
ちなみに、吉田豪さんは、「サブカル鬱」の原因として、基礎体力がない文化系は、40歳くらいから急激に体力が落ちていくことと、子どもの成長や親との関係の変化などの環境の変化が大きいのではないかと推測されています。
町山智浩さんは、「サブカルの人たちが40歳ぐらいでおかしくなるのは簡単だよ。もともとモテなくて早めに結婚して生活を支えてくれた女性がいたのに、モテだしたらほかの女に手を出して家庭が壊れるの。みんなそうだよ!」と仰っているのだとか。
こうして考えると、サブカル者の将来は、どっちに転んでもつらい、ということになるんでしょうね。 まあ、だからといっていまさら体育会系に「転向」できるわけもないので、どうしようもないんでしょうけど……
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